もうひとりの
急いで降りていき、次を急ぐ。
――が
「レイラ? それに皆も……」
「先生!?」
リフィルと鉢合わせた。多少怪我があるが、無事な様子だ。
「大丈夫だったんですか!?」
「いいえ、さっきまで瓦礫に埋もれていたわ。でも彼が……あら?」
リフィルが自分の後ろを指し示そうとして――その先に誰もいなかった。
「クラトス?」
名を呼びかけても、返事が返ってくるわけもなく。
「……お父様が?」
「ええ。彼が私を助けてくれて……ついさっきまで一緒だったのよ」
「……そう、ですか……」
もし顔を合わせられたら、聞きたいことがあったのに。すれ違ってしまうなんて。
「そう気を落とさないで。あなたたちが仲間を助けていて、彼も同じなら、またどこかで顔を合わせるかもしれないでしょう?」
「はい……」
残るはプレセアとジーニアス。助けている時に会えるかもしれない。
「それで、ゼロス。あなたはどうしてここにいるのかしら?」
ゼロスを見やるリフィル。その目は鋭い。
「そりゃあ、レイラちゃんの愛の力のおかげってやつ?」
「そんなことあるわけないだろ、このバカ!」
冗談めかして言うゼロスをしいなが殴り飛ばす。
「いってぇ!」
「それで、どうしてなんだい?」
「えっと……和解、した……?」
「何であんたが疑問形なんだい」
歯切れの悪いレイラに更にしいなが詰め寄る。
「それより、早く先に……」
「少しくらいは話す時間あるだろ?」
「うぅ……」
「まあまあ、それくらいにしておけって。一度は裏切ったけど今の俺さまは味方。そういうことで」
「一度裏切られてまた信用するバカがどこにいるんだい!」
どうにか、どうにか知られたくない部分だけ伏せて話せば。
「戦って、私が勝って……。和解とか反省させた……って所かな」
「……そうなのかい? あいつを反省させるなんて、よほどのことをしたんだね」
「ま、まあね……」
まだ怪訝さは拭えてないが一応、納得してもらえたようだ。
それからまた地下へと進んでいて、残りの仲間と会えた。
「プレセア! ジーニアス!」
「みなさん、無事でしたか」
「みんなも、クラトスに?」
「いいえ、私はクラトスに助けられたけど、リーガルとしいなはレイラとゼロスが助けたそうよ」
「ゼロスが?」
この場にいるゼロスを意外そうに見やるジーニアスとプレセア。
「ねえ、お父様は?」
「それが……私たちを助けた後、すぐどこかに行ってしましました……」
「ここで待っていたら他の仲間も来るって言ってね。何か、急いでるみたいだった」
「そっか……」
結局会えないまま。後は大いなる実りの間へ行きロイドと合流するだけだが、恐らくクラトスは来ないだろう。
「……みんな、先に行ってて。私、お父様の所に行く」
「そんなこと言ったって、クラトスがどこに行ったか分からないんじゃ……」
「……心当たりはある」
さっきゼロスから聞いた話から推測すれば、クラトスの行き先はアイオニトスの保管庫しかない。
具体的な場所までは流石に分からないが、およその見当はつく。
「分かったわ。行ってきなさい」
「先生……」
「ただし、ちゃんと一緒に戻ってくること。いい?」
「はい!」
来た道を引き返そうと振り返る。が、呼び止められてしまう。
「おっと、俺さまも行くぜ。あいつに言ってやりたいことがあるからな」
ゼロスも付いてくると言う。断っても無理やり付いていきそうな調子だ。
「……分かった」
「そうと決まれば、早く行こうぜ」
「う、うん……。……みんな、絶対戻ってくるから、それまでロイドのことお願い!」
「任せな! そっちこそ、そのアホ神子が何かやらかしそうなら今度こそ遠慮なくやっちゃっていいんだからね!」
「うん!」
みんなに見送られて、引き返していく。
「……本当にあいつも行かせてよかったのかい?」
「あら、もしかして気付いてないのかしら?」
不安そうなしいなに、リフィルがしてやったりな笑みを浮かべる。
「? どういうことだい?」
「ふふ、気付いてないならそれはそれで」
「そうだな。我らが言ってしまうのも野暮なことだろう」
リーガルもリフィルに頷く。
「どういうこと? 姉さんもリーガルも」
他のみんなも首を傾げる。そんな中、リフィルとリーガルは顔を見合わせて笑う。
2人の間に流れる空気が、明らかに変わっている。より密に、近くなっている。
何があったかは知る由もないが、確かなのは2人の関係が大きく変わったこと。それも、「そういう意味」で。
何も突然のことでもない。以前からお互いただならぬ想いを抱いていた。
それを、大人である彼らは見抜いた。それだけのこと。