決着
どちらも、絶対に敗けられない。戦いは苛烈なものだった。
剣戟や魔術が絶え間なく飛び交う。治癒術が休む間もなく唱えられていく。
ミトスの強さは相当なものだったが――たったひとりで戦っている。その点ではこちらの方が有利だ。時間が過ぎるにつれ、形勢はこちらに傾いてきた。
あと、ひと押し。レイラは一旦距離をとり、呼吸を整え、剣を構え直す。
同様に距離をとっていたゼロスと顔を見合わせ、心得たようにお互いに頷く。
そして、トドメを決めるべく、再度ミトスの元へ駆けていく。
「見切れるか!」
「翔破裂光閃!」
ゼロスと共に、無数の突きを繰り出す。
渾身の連携に、流石のミトスも立ち続けられない。
どうにか、戦いはこちらが決した。
「……そんな……ボクが負けるわけがない……姉さまと……還るんだから……」
ミトスは消滅し、後にはクルシスの輝石だけが残った。ジーニアスがそれを拾う。
浮上していた大いなる実りは元の位置に戻ってきた。無事、守れたのだ。
「……終わった」
「いや、まだ終わっていない」
安堵するロイドを、クラトスが指摘する。
「まだ世界は引き裂かれたまま、大樹も発芽していない。オリジンを……解放しなければならないだろう」
今は、ミトスを倒しただけ。まだ何も解決できていない。
でも、そのためには。
「……その意味が分かってるのか? あんた……死ぬかもしれないんだぞ」
「私は、全てから逃げ出そうとした。過去の罪をまだ清算していない。オリジンの封印を解くため、そして私自身の過去との決別のため、ロイド……私を倒すがいい」
「……っ」
そのつもりだとは分かっていた。クラトス自身からも言われていた――それでも、はっきり宣告されると苦しくなる。
「そんな勝手なこと、許さないぞ!」
「……オリジンの封印の前で待つ」
止めようとしても聞き入れられず、クラトスは去ってしまった。
名残惜しげに見送るレイラに、ロイドが気遣わしげに声を掛けてくる。
「レイラ……よかったのか……?」
「分かってたことだから。……止められるなら、とっくに止めてる。私が何言っても、あの人は意思を曲げない」
既に、そのことについて了承した後だ。だからクラトスについてレイラができることはない。
「そうか、ごめん……」
「私の方こそ……。私、どうやってもお父様とは戦えない。だから、ロイドに辛い役割を押し付けてしまってる」
戦いを止めろとも言えず、自分も戦うとも言えず。
結局、全てをロイドに委ねてしまう形になってしまった。