次期頭領

里に戻ると、頭領が目を覚ましたことで大騒ぎになっていた。
宣言通り、イガグリはしいなを出迎えてくれた。

「おじいちゃん……!」
「しいなよ……」
「……は、はいっ。頭領……」

背筋を伸ばし気を引き締めるしいなに、イガグリは優しい笑みを向ける。

「おめでとう」
「え?」
「ヴォルトと契約できたようじゃな。流石は……わしの大事な孫じゃ」
「……おじいちゃん!」

積もる話もあるだろう。しいなを残して他の皆は家から出る。

イガグリから、改めてロイドたちへ話があるということで集まった。

「話は聞きましたぞ。しいながお世話になっているとか」
「いや……そんな……」
「タイガの方針はわしが目覚めた後も変わりませぬ。我らミズホの民は、貴殿らの目指す世界作りに協力する」

ミズホの立場は変わらず。これからも協力してくれるという。

「ついてはしばしの間、しいなを里に残してもらいたい」
「それはどういうことだ?」
「今は言えません。全ては頭領のご命令です」
「悪いようにはせぬ。そうじゃな。一晩、我慢してくれ」
「ごめんよ、みんな。必ず戻るから、ちょっと待っとくれ」

何か、重大なことがあるのだろう。心配もあるが、待つしかない。

一晩明けて里に戻ると、ミズホの民が集まっていた。その中心には、イガグリや、いつもと違う装束に身を包んだしいなが。その顔は、僅かに不安気だ。

「つい先程、しいなは儀式を終えた」
「しいなは失われた12枚の札を全て復元させた。よって、しいなが次代の頭領となる。みな、異論はあるか?」

イガグリが、次代の頭領にしいなを指名する。
里の者の中には、ヴォルトの悔恨を未だ残す者もいるだろう。だが。

「……しいなの力によって、我らに新しい世界が開かれれば、我らヴォルトに傷つけられし者とてしいなを認めぬ訳にはいかなくなるだろう」
「そうよ。でも……一先ずおめでとう、しいな」
「おめでとうございます。次期頭領!」
「あ……ありがとうみんな!」

ミズホの民皆、しいなを次期頭領に認めた。悔恨より、その功績を認めたのだ。

「しいな。お前が真に頭領と認められるには、世界を統合しなければならない。この里を去ったくちなわのためにも……がんばれ」
「……ああ。いつかくちなわが戻ってきてくれるような、そんな頭領になれるように、がんばるよ」

これから、世界は大きな変化を遂げようとしている。その立役者であるしいなを頭領にして、新たな時代を迎える。イガグリらは、世界統合の希望を、次期頭領に任命することで託した。

改めて、世界統合への気が引き締まる。

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