旧トリエット跡
こうして無事、旧トリエット跡にまで到着できた。
「あちー……疲れた……」
「ほら、やっぱりバテてる」
砂漠の過酷な気候に案の定、最初からペースを考えずに全力でいたロイドはバテていた。
「もう砂漠は飽き飽きだぜ」
「だから言ったのに……」
レイラも気持ちは分からないことはないが、最初に忠告したことをロイドは忘れきっている。自業自得だ。
ふと、先頭を歩いていたノイシュが後ずさりする。
「どうした? ノイシュ」
「気をつけろ……敵だ!」
クラトスの言葉通り、魔物が現れる。
それも、今まで出会ったことのないタイプ――魔法生物だ。
「!」
完全に油断していた。魔術の詠唱をされるも、反応が遅れてしまう。
「くっ、粋護陣!」
魔物の放った火球がレイラに向かって飛んでくる。咄嗟に防いで大事には至らなかったが。
「虎牙破斬!」
その隙にロイドの剣が魔物を切り伏せた。
「……私に来たからよかったものの、そうじゃなかったらどうなっていたことか……」
レイラは一息ついた。レイラの認識が正しければロイド達は防御術を会得していなかった筈だ。被害が大きくなるのは避けられない。
「……このままでは足手まといになりかねんな」
その様子を見たクラトスがつぶやいた。
「何がだ?」
「……とりあえずお前たちは、自分の身を守る技術を学んだ方がいい」
「それは、護身術みたいなものですか?」
「そうだな。先ほどレイラがやっていたように、戦いの際自らの防御を高める技だ」
「……さっきみたいに魔術が飛んできた時のために覚えておくに越したことはない、か」
クラトスの指導の元、皆は防御術を習得していく。
元々この手の技は戦いの基本。習得は容易だ。
「……あら、そういえばノイシュはどうしたの?」
リフィルがノイシュの姿がないことに気付く。
皆辺りを見回すが、見つからない。
「あいつ……また逃げ出しやがったな」
「魔物に敏感なのだろう。今後も魔物の多そうな場所ではノイシュをあてにしない方がいい。かわいそうだ」
クラトスの言葉にロイドは複雑そうな顔をした。確かに今までロイドはノイシュをあてにしすぎているきらいがあった。
「……随分と気遣いますね。動物が好きなんですか?」
「……いや」
頭を振ったクラトスを特に気にするでもなくレイラは遺跡に向き直った。