精霊の王

解放されたオリジンと向き合う。
ミトスに裏切られて封印されてしまったせいか、オリジンは酷く冷淡だった。

「資格無き者よ。私は全てに失望している。お前も私を失望させる為に現れたのか?」
「オリジン。お前はミトスとの契約に縛られていないのか?」
「我の解放と共にミトスとの契約は破棄された。もはや、何人たりとも我と我そのものを行使することは出来ぬ」

オリジンは、契約を交わす意思はないようだ。かつてヴォルトもそうだったとは聞いているが、精霊を納得させるのは困難なことだ。

「誓いを立てても、ダメなのかい? あたしたちにはエターナルソードが必要なんだ!」
「エターナルソードで2つの世界を1つに統合したいんだ。そして、大樹カーラーンを復活させる! このままじゃ、世界は永遠に搾取されあってみんな絶望しちまう!」

人に対する絶望からか、世界のことにも関与しない様子だ。

「それは……自らと違うものを認められない人という生き物の弱さから発生したことだろう」
「確かにそうかもしれない。でも間違いは気付けば正せるはずだ」
「取り返しのつかないこともあろう」
「それでも……できる限りのことをしなくちゃ……」
「そうだ。俺は諦めたくない。誰だって、生まれたその瞬間から生きる権利がある。それを取り戻したいんだ。人もエルフもハーフエルフも、ドワーフも精霊も……みんな、自分であるってだけで生きてる価値があるはずだろ!」

説得しても、詭弁だとしてオリジンが聞き入れる様子はない。

「オリジン……。私は長い間、この世界を救うのはミトスの言う理想に縋るしかないのだと思っていた。かつてあなたがミトスに理想に共鳴したように、私もそれしか手段がないと思っていた。しかしロイドは違う。何かを変える為には、自分が動かねばならぬことを教えてくれた。誰かの力に頼り、理想に共鳴しているだけでは……駄目なのだと」

クラトスの言葉に、オリジンも思う所があったのだろう。しいなに目を向ける。

「……召喚の資格を持つ者よ。誓いを立てよ」
「オリジン! それじゃあ!」
「今一度、人を信じてみよう。お前が言った、誰もが等しく生きられる世界の為に、私も自ら動く」

誰もが等しく生きられる世界を望む。その気持ちそのものは精霊だって同じ。

「契約者しいなの誓いはただ1つ。自分が自分らしく生きられる世界を……誰かが無意味な死の犠牲にならない世界を取り戻す! それだけだ」
「では、その誓いを元に契約を行う。我と戦え!」

契約を交わすため、お互いに武器を手に取る。

互いに力を示すための戦い。皆が、全力を尽くして挑んでいた。
そしてあと少し、というタイミングを計らって、ロイドとしいなが前に出た。
しいながオリジンに符術を纏わせる。

「逃さないよ!」
「蛇影剣!」

そこにロイドが突きを放った。
それが決定打となり、オリジンは武器を収め戦いを終えた。

「契約者しいなよ。そしてロイドよ。お前達に、私の力を預ける。
……それを使って、エターナルソードを全ての命ある者を救う剣とせよ。しかし、エターナルソードはミトスとの契約のまま、エルフの血を引く者しか使えない。お前自身の力で使いこなし、あの剣とお前との間で、もう一度新しい理を引くがいい」

無事、契約を交わし、オリジンに認められた。

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