デリスエンブレム

またミトスの居城へと進もうとした時、何かの仕掛けが作動する。

「な、何だ!?」
「……今のは……」

デリスエンブレムが完成した。そのおかげで、ミトスの城への道が開かれたのだ。
もう、罠を警戒する必要はない。

ミトスの城へと向かう道すがら、話題はそのことでもちきりだ。

「デリスエンブレムは、ミトスの暗闇そのものだ。ハーフエルフとして虐げられ、勇者として持ち上げられ、裏切られた。そのことに対する、憎しみや恨みだ」
「それによって、皆の心に巣食っていた負の感情が刺激されたのね」
「そうすることで侵入者を防ぐ。そういう仕組みだ」

仕組みを聞かされてしいながぼやく。

「とんでもない仕掛けだね。全く」
「……目の前の相手が偽物だと分かっていながら口車に乗ってしまう。恐ろしい仕掛けです……」

負の感情は、ほんの少し気を緩めればそこに付け入り篭絡してしまう。
あまりに恐ろしく、そして哀しい仕掛けだ。

「ロイドに感謝しなければ。仲間を救えたのはロイドの力だ」
「それは違うぜ。俺じゃなくてエターナルソードの力だ」
「ううん、エターナルソードの力だけじゃないよ。ロイド自身が強かったから……」
「そ、そうかな……ありがとう」

他の誰かがエターナルソードを持っていたとして、このように仲間全員を救い出せたとは言い切れない。
紛れもない、ロイド自身の強さだ。

「本当に、ロイドのおかげだよ。今でもぞっとする。ロイドがいてくれなかったら、今頃……」
「他の皆みたいに呼びかけても聞こえてなくてどうしようって思ったんだ。でも気付いてくれたんだな」
「気付くよ。ロイドのことなら」

過去に離れたロイドの危険に気付けたように、ロイドが傍にいてくれるなら、たとえ聞こえなくても気付ける。

「助けられたりだらしないけど……これでもお姉さんなんだから、分かるよ。ロイドのこと」

自分のことを理解できた今なら、胸を張れる。

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