最後の戦い
まずはミトスの技量を熟知し、そしてミトスもよく知った相手であるクラトスが前に出てミトスを牽制する。
ロイドがその後ろから不意をつくが、ミトスは難なく対応する。
「黎明へと導く破邪の煌きよ、我が声に耳を傾けたまえ。聖なる祈り、永久に紡がれん、光あれ! グランドクロス! 」
けど、いくらミトスが複数人相手にひとりで対応できるとしても限界はある。コレットの天使術が、誰にも邪魔されることなく発動する。
こちらには仲間がいてくれる。でも、ミトスはたったひとり。
ミトスは、きっとマーテルのため、マーテルと共に平穏に生きたい、その一心で大戦を止めて、世界のために戦ってきた。
けれど裏切られ、マーテルを殺されたことで、それは歪んでしまった。マーテルのため、その目的だけは決して変わらないのに、方法が歪んでいった。
「ボクの全ては、姉さまのためにあるんだ……お前らなんかに邪魔はさせない! この世界の全てを無に帰してやる!」
「ミトス、もうお姉さんをこれ以上苦しめないで!」
「そうさ! お前だって、本当は分かってるんだろ」
「お前達には……ボクの気持ちは分からない……」
「どうして、そんな悲しいことを言うの……」
マーテル自身が、いちばん今のミトスの作ろうとしている世界を望んでいないことを。ミトスのやろうとしていることに何の意味もないことを。
きっと、分かっていても後に引けなくなってしまったのだ。
「……天光満つる処に我はあり、黄泉の門開く処に汝あり、出でよ、神の雷――インディグネイション!」
ジーニアスが、最高の雷の術を放つ。
確実に、ミトスを追い込んでいく。
レイラも、自身の使える最高の技を出すため構える。
「……終わりにしよう――シャイニング・バインド!」
聖なる鎖がミトスを拘束し、光を浴びせる。
ミトスが動けないところに、ロイドが飛び込む。
その手には、2つの剣をひとつにした、エターナルソード。
「とどめだ! ……天翔蒼破斬!」
振り下ろした剣が、ミトスへの決定打となった。
「姉さま……」
ミトスは倒れ伏し、その体は消滅した。
「ミトス……さよならだ……」
「ミトスの……わからずや……」
最後まで、分かり合うことができなかったことを悔やむ。
「なんだか、悲しいね……」
「……でも、きっとこうするしかなかったんだと思う」
後に引けなくなったミトスを止めるには、強引な手に出るしか、なかった。それがきっと、ミトスのためだ。