世界統合
エターナルソードが、ひとりでにロイドの前に浮かび上がる。
『古き契約の主は消えた。新たなる契約の主よ。この剣に何を願う?』
ミトスがいなくなり、エターナルソードの契約は完全にロイドだけのものになった。
これで、ここに来た目的を果たせる。
「2つの世界をあるべき姿に!」
願いを口にし、剣を掲げる。
2つの世界を繋いでいた救いの塔から、世界へと光が広がり、世界中が光へ包まれる。
ふたつの光は引き合うように、ひとつに結びつく。
完全にひとつになると、光は収まり、あとにはあるべき姿へ戻った世界が残った。
気が付けば、皆は地上に立っていた。
「……戻ってきたのか?」
すぐに地震が起こる。
「な、何が起きたんだ!?」
地震と共に、精霊たちが全て姿を現す。
「どうしたんだ、あんたたち!」
今の状況を、エターナルソードが説明する。
『願いは叶えた。しかし、楔が無い。楔が無ければ大地は死滅する」
「どういうことですか!」
『元々世界は滅亡を防ぐために2つに分けられたのだ。あるべき姿に戻れば、世界を支えるマナは不足する。大地は……消滅しようとしている』
2つに分けることで辛うじて保たれていた世界をひとつにすれば、それを支えるほどのマナは残っていない。
「そんな御託はどうでもいい! それより、どうしたら大地を守れるんだ!」
『2つの世界を支える為、大樹を楔とする。大地の滅びを防ぐには、それしかない』
「大樹カーラーンを目覚めさせるんですね」
「……そうか!」
「ロイド、急いで! デリス・カーラーンが遠くへ行っちゃう前に、大いなる実りにデリス・カーラーンのマナを照射しないと!」
「よし! 頼む、エターナルソード!」
ロイドが剣を掲げると、警告が返ってくる。
『既にデリス・カーラーンは大地の引力圏を離れようとしている。これを引き止めることはかつてのユグドラシル……ミトスすらできなかったことだ。それでも、やるのか?』
「ああ」
『エクスフィアで強化していても体が持たないだろう。それでも本当にやるのか?』
「やるったら、やるんだよ! やんなきゃどうしようもないだろーが!」
『……承知した』
大いなる実りにマナが照射される。だが、大いなる実りはうんともすんとも言わない。
やがて、エターナルソードも消滅してしまう。
「どうしてだ!? マナが弾き返されちまう!」
「大いなる実りが……死んでしまっているんだわ」
そのまま、デリス・カーラーンと共に大いなる実りも一緒に離れようとしていく。
「待て! 行かないでくれ! 頼むから、目覚めてくれ!」
ロイドのエクスフィアが、今までにない輝きを放つ。
ロイドの意志に反応するように、ロイドの背に翼が広がった。
他の誰のものとも違う、大きな翼は、そのエクスフィアの特異性から来るものなのだろうか。
その翼で、ロイドは大いなる実りを追いかけ飛ぶ。
ミトスの輝石の欠片が、今度はロイドのエクスフィアを離れて大いなる実りへと吸い込まれていく。
そうしてデリス・カーラーンは止まり、大いなる実りもその場に留まる。
後からコレットが追いかけてきて、共に大いなる実りを確認する。
「デリス・カーラーンが止まったみたいだね」
「ああ、どうしたんだろう。エターナルソードも消えちまったのに……」
そう思っていたところに、ロイドの手に再びエターナルソードが現れる。
「エターナルソードが……!」
「よかった……!」
今なら、大いなる実りはマナを吸えている。
ロイドとコレット、ふたりで一緒に剣を手に最後の仕上げにかかる。
「これが最後の願いだ。エターナルソード……」
「大いなる実りを……目覚めさせて!」
「頼む、頼むから目覚めてくれよ!」
「……お願い!」
剣を振り下ろし、ありったけの想いを込める。
「目覚めろ、大樹カーラーン!」