果てなき旅へ
新たな世界で、皆は新たな歩みを始める。
ハーフエルフ差別、シルヴァラントとテセアラ間の和平、マーテル教会、エクスフィア――世界にはまだまだ、問題が山積みだ。
新たな世界を作りだすため、各々がやるべき問題へと向き合っていく。
そして――
「本当に、デリス・カーラーンへ行くのか」
「クルシスのハーフエルフがいては、他のハーフエルフ達が住む場所を失う。この騒ぎの責任は、クルシスの生き残りとして私が負うべきだ」
クラトスは、クルシスやディザイアンの残党と共に二度と戻ることのない、果てのない旅へ出ることを決めた。
「俺たちは、この大地に残されたエクスフィアを回収する」
「……そして、私が……クルシスの所有していたエクスフィア達を宇宙に流す。結局……最後までお前たちを巻き込んでしまったな」
「そんなのは……いいけど……」
「……自分で決めたことだから、巻き込まれたなんてちっとも思ってないよ」
鉱山は爆破して採掘を止めたが、既に使われているエクスフィアはひとつひとつ、全て回収して破壊しなければならない。もう、新たな命が犠牲にならないようにするために。
下手をしたら一生かかるような、長い旅になる。
「……お父さん、これ……」
フラノールからずっとレイラが持っていたペンダントを、クラトスに返す。
「いや、それはお前が持っていてほしい。結局お前に何もしてやれなかった。せめてもの、私からの餞別だ」
「……そんなの、いらない。ここにはロイドも……みんなもいる。でもお父さんには誰もいない。これは、お父さんこそ持っておくべきだよ」
「お前は、私を案じてくれているのだろう。だが、私としてはお前に何も残せなかったことが心残りになる方が心苦しい」
「……分かった。ずっと、ずっと大切にするから」
レイラがいくら必要ない、と言ったところでクラトスは満足しないだろう。ならレイラにできるのは、このペンダントを何があっても手放さないことだ。
「……それそろ行くぞ。その剣で我らをデリス・カーラーンへ運んでくれ」
「……さよなら。……父さん……っ!」
「…………」
エターナルソードの、最後の仕事は、クラトスを送り出すこと。
永久の別れを告げて、離れゆくデリス・カーラーンを見送る。
「……お前は私より先に死ぬな。ロイド……レイラ……私の子供達よ……」
旅立つクラトスは、そう言い残して行ってしまった。
レイラは、デリス・カーラーンがその目で見えなくなっても、ずっと空を見上げ続けていた。
「……行かないでほしかった。行かないでって、引き止めたかった」
何度も喉まで出かかった、決して言ってはならない言葉。その本音が、今になって零れた。