再生の書

ハコネシア峠まで行き、コットンにスピリチュア像を渡す。

「おお、確かに! では再生の書を好きなだけ見るがいい」
「早速再生の書を読むぞ」

リフィルが貴重な史料を前に機嫌がよくなる。
コレットが書を開き、リフィルと共にざっと目を通す。レイラも横から覗き込む。
再生の書はあまり保存状態が良くなかったのか所々壊れており、後の方になるほどそれが顕著だ。

(あれ?)

その中身は天使言語。どういう訳か、レイラはその内容が理解できた。訝しく思いながらも、それに言及することはやめた。今は、中身の方が大切なのだから。

「ふむ。かなり古い言い回しだな」
「なんて書いてあるんだ?」
「かなりの量だな。コレット、封印に関する部分のみ抜粋して読み上げてくれ」

どこに行って教えを広めただとか、そういう内容もある。そういうものは今は必要ではない。

「はい。途切れているところは飛ばしますね。
――荒れ狂う炎、砂塵の奥の古の都にて街を見下ろし、闇を照らす
清き水の流れ、孤島の大地に揺られ、溢れ、巨大な柱となりて空に降り注ぐ
気高き風、古き都、世界の……巨大な石の中心に祀られ邪を封じ聖となす
煌めく……、神の峰を見上げ、世界の柱を讃え……古き神々の塔の上から2つの偉大なる――
……あとは壊れてしまってます。読めません……」
「じゃあ封印の数があとどれぐらいかってのも分からないんだ」
「そうだな……」

ロイドが疑問を呈する。

「最初の荒れ狂う炎って奴は火の封印で、清き水が水の封印のことだろ? 他はどういうことだ?」
「風の封印は……アスカード遺跡だろう。アスカードに行けば手掛かりがある筈だ」
「神の峰を見上げっていうのは?」
「多分、マナの守護塔だと思う。あそこからは救いの塔の周りの山が見えるから、それが神の峰なんじゃないかな」
「で、そこは何の封印なんだ?」
「煌めく……つまり輝きとか、そういうもの……多分、光……」
「そうなのか?」
「確証はないけど」
「まあいいや、とにかく、封印の場所は分かったんだし、早速行こうぜ。じーさん、ありがとな」
「助かりました〜」
「うむ、また見たければいつでも来るがいい」

スピリチュア像を手にしたコットンはかなり上機嫌であり、気前もよかった。

「ここから近いのはアスカード遺跡ですよね?」
「ええ。まずはそこに向かいましょう」

目的地も定まり、峠を越えて歩みを進める。

(それにしても……)

再生の書に綴られた天使言語が理解できたレイラ。
少なくともイセリアでは学んでない。ならば、記憶を失う前に学んだことになるが……
天使言語を習得しているなんて、記憶を失う前の自分は一体何者なのか。翼のこともあり、不安と疑問に苛まれるしかなった。

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