未熟
「神子は何処だ?」
聖堂の前で、ディザイアンのリーダー格の男が聖堂を守ろうとする老婆――コレットの祖母ファイドラと対峙していた。
不意に、ファイドラが階段を昇ってくる少女たちを目にする。
「コレット、逃げるのじゃ!」
その警告に、階段から背を向けていたディザイアンもコレット達に気付き振り向く。
「ボータ様! あれが神子のようです!」
「よし……神子よ。命は貰い受けるぞ!」
「ディザイアンなんかに、やらせるかよ!」
ロイドの言葉を耳にすると、ディザイアンが笑い出す。
「ディザイアンか、はは……!」
「な、何がおかしいんだよ!」
「では、その憎いディザイアンに殺されるがいい!」
ディザイアンが武器を構え、向かってくる。レイラたちも武器を取り態勢をとる。
ロイドが即座に飛び出し、コレットとレイラもそれに続く。ジーニアスは後方で魔術の詠唱を始める。
レイラは相手の振り下ろす短剣を剣で受け止め、隙をついて剣を振り下ろす。
「……決まれっ! ファイアボール!」
直後にジーニアスの放った火球が相手に襲いかかる。
そうした攻防を続け、ロイドたちの予想外の強さに焦ったのか、下っ端たちは撤退していった。
「小僧、我らが崇高なる計画を、邪魔立てするな!」
代わりに出てきたのは巨大な鉄球を振り回す巨漢。
「わ、わっ!」
レイラは咄嗟に距離を取って相手の射程外に出る。
「うわっ!」
「ロイド!」
近づこうとしたロイドがあえなく吹き飛ばされ、体を地面に打ち付けられてしまう。ロイドの顔が痛みに歪んだ。
「レイトラスト!」
コレットが離れた場所からチャクラムを投げるも、決定打にはならない。
「はぁっ……はぁっ……」
「こいつ、強いよ!」
「くそっ、俺じゃ、敵わないのか……!?」
相手の強さに太刀打ちできず、皆歯痒く思う。
皆膝をつくも、相手は近付き、鉄球を振り下ろそうとしている。
(たすけて……おとうさん……っ!)
レイラは目を瞑り心の中で強く思った。
彼女には記憶がない。父親なんて顔や名前どころかいるのかどうかさえ分からないのに、どうしてか、強くそう願っていた。