溢れる懐かしさ
――キンッ!
金属と金属が弾かれた音に何事かと目を開くと、敵との間に見知らぬ男が立ちはだかっていた。巨漢の鉄球が間一髪、男の剣で防がれ、レイラたちは命拾いしたのだ。
「あなたは……!?」
「下がっていろ」
突如現れた男はレイラたちが驚く間もなく敵を切り伏せてしまった。
「すごい……」
「めちゃめちゃ強いよ、あのおじさん!」
「そ、そうだな……」
コレットとジーニアスは称賛するも、ロイドは複雑な面持ちになってしまう。
突如現れた男を目にしたボータが眉を顰めた。
「まさか、貴様が現れるとはな……撤退するぞ!」
そう言い残し、退いていった。
それを見届けた男はレイラたちの方を振り返る。
「……無事か? 無事のようだな」
「あ……」
男の顔を見たとき、レイラは体のどこかが震えた。
自分と同じ鳶色の髪と目。長い前髪の間から覗かせる鷹のような鋭い眼光。
(知ってる……この人は……!)
レイラの心は言いしれない懐かしさと愛しさに満ち溢れていた。
私はこの人を知ってる。私はこの人に会いたかった。
男のことを何も思い出せないのに、心の底からそう思えた。
男の方はレイラを見て僅かに目を丸くした気がした。
レイラが声を上げようとしたその時。
「神子を救って頂き、お礼の言葉もありませぬ」
ファイドラの声に、レイラの思考は一気に現実へと引き戻された。