落ち着きのない2人
「くそっ、何でこんなことしなきゃならないんだよ!」
コンベアを中々止められず、目に見えてロイドは苛立っていた。
「侵入者対策よ。簡単に進めないようにしてあるのは当然だわ」
リフィルが宥めるも、ロイドと――クラトスは益々落ち着きがなくなる。
「こんな所でちんたらやってるヒマはないってのに!」
「全くだ。強行突破できれば……」
「2人とも落ち着きなさい! どうしたというの? クラトス、あなたらしくないわよ」
「そうですよ。ずっと思ってましたけど、このところのクラトスさん、らしくないです」
ロイドにとってクヴァルは母親の仇。早く討ち倒したいと逸るのは分かる。だけどクラトスがこうも苛立ったりする理由に思い当たらない。牧場に1度潜入して以来、彼はずっと苛立っている。
レイラたちの知らない所で何かあったのかもしれないが、クラトスは何も語らない。
「……あのクヴァルってヤツは絶対に許さねぇ。それだけだよ」
「その通りだ。ヤツは放っておけん」
「とにかく、焦って無茶をしてはダメよ!」
「さっき、ルインで言ったこと、忘れないで」
レイラはそう告げながらロイドの手からソーサラーリングを取り上げる。
「レイラ?」
「私がやる。2人はしばらく頭を冷やして」
有無を言わさず、レイラはリングを使いコンベアの制御装置を止めていく。
「レイラ、ごめん」
「どうかした?」
「俺、焦ってばっかでさ。クヴァルと戦う時も多分、落ち着いてられないと思うんだ」
レイラはふぅ、と長い息を吐き出す。
「バカ。何のためにコレットたちが危なくなるっていうリスクを冒してまで先生に来てもらったと思ってるの?」
コレットやジーニアスも別行動できる実力をつけてきているし、しいなもいるから大丈夫。それでも万が一の時に治癒術の使える者がいないのは危険だ。なのにリフィルをこちらに振り分けているのには。
「ロイドが無茶やるって目に見えてるから。私1人じゃフォローできる自信がないから、いつも冷静でいられる先生に来てもらったんだよ。気持ちは分かるけど、だからこそ心配なんだから」
「ロイド、クヴァルが許せないのは私達も同じよ」
「そうだな……ありがとう、2人とも」
止めたコンベアの先の転移装置。
皆が到着すると同時に、そちらも起動した。
「コレットたちも上手くやれたようね。準備はよろしい?」
「ああ!」
「いつでも」
確認を取り、頷きあう。そして、転移装置に乗り、クヴァルの待ち受ける部屋へと移動していく――。