契約の儀式

水の封印の祭壇に再び赴く。

『契約契約〜』
「確かに興味深いわ」
「……契約、か」

しいながますます焦りを顕にする。

「簡単に言うんじゃないよ。……し、失敗するかもしれないし」
「大丈夫だって! なんかわかんねぇけど」
「そうだよ〜しいなならだいじょぶだよ」
「頑張って、しいな」
「……何も知らないくせに。
まあいいよ。巻き込まれて怪我しても、恨まないどくれよ!」

しいなが祭壇の前に立つと、一際大きな光が溢れる。
そしてそこに現れたのは、清らかなる水の精霊、ウンディーネ。

「契約の資格を持つ者よ。私はミトスとの契約に縛られる者。あなたは何者ですか」
「ミトスってカーラーン大戦の勇者ミトスか?」
「ミトスって剣士のくせに、召喚までできたんだ」
「ミトスの名前は、男の子の名前としてはありがちだから、勇者ミトスとは限らないわね」

ミトスの名に皆口々に驚きを見せる。

「我はしいな。ウンディーネとの契約を望む者」
「このままでは……できません」
「な……何故!」

思いも寄らない言葉にしいなが驚く。

「私は既に契約を交わしています。2つの契約を同時に交わすことはできないのです」
「ミトスって奴との契約か……」

しいなはウンディーネから視線を外し、皆の方を見る。

「どうしたらいいのさ! 研究機関じゃこんなこと習わなかったよ!」
「ど、どうしようロイド?」
「……うーん、前の契約をなかったことにしてもらえばいいんじゃないか?」
「どうやって!? 前の契約者のミトスって奴がどこにいるかも分からないのに!」
「精霊との契約には、誓いが必要だ。契約者が誓いを守る限り、契約は行使され続ける」
「……そうです」

ウンディーネが静かに頷き、しいなも承知する。

「それは知ってるよ。精霊は契約者の誓いに賛同し、契約を交わす」
「そうだ。だからお前はロイドの言う通り、過去の契約の破棄と自分との契約を望めばいい。前の契約者が誓いを破っているかもしれないし、もう亡くなっているかもしれない」

あっさり言うクラトスにジーニアスが首を傾げた。

「そんな簡単なことでいいの?」
「簡単というが、前の契約者が生きていたり、誓いを破っていなければ、どうにもならないことだ」
「もしそうなら、本当に前の契約者を探すかしないとならないってことですか?」
「召喚の技術は途絶えて久しいのよ。生きている可能性の方が少ないわ」
「…………」
「わかったよ」

しいなは再び、ウンディーネに向き直る。

「ウンディーネ。我が名はしいな。ウンディーネがミトスとの契約を破棄し、私と新たな契約を交わすことを望んでいる」
「新たな誓いを立てるために契約者としての資質を問いましょう。武器を取りなさい」

ウンディーネが構える。
こちらも驚きつつも武器を構えたことを確認すると、ウンディーネは向かってきた。

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