解呪

ハイマまで行き、宿屋にいるピエトロたちの元までやって来る。

「みなさん! 治癒術は……」
「見つかったよ」
「今から試すわ。よろしい?」
「ええ! お願いします!」

リフィルがベッドに横たわるピエトロの傍らに跪く。

「レイズデッド!」

光が溢れて、ピエトロの呪いを解いていく。
起き上がったピエトロの瞳は、確かに光が宿っていた。

「ここは……」
「目を覚ました……! よかった! 分かりますか? ここはハイマです」
「ハイマ……! じゃあボクは辿りつけたのか!」
「しいなさんが……この人が助けてくださったんです」

ソフィアがしいなを指し、ピエトロも合点が行く。混濁していた記憶も纏まったようだ。

「そうだ! 確かルインを出てからディザイアンに襲われて……そこにこの人が……! ありがとうございます!」
「何だよ。そんな、いいんだよ。それにサ、あんたがこうして意識を取り戻したのはこのリフィルのおかげなんだ。礼ならこの人に言っとくれよ」

ピエトロがリフィルを見て頭を下げる。

「そうですか……本当にありがとうございます。これで神子様をお待ちすることができる」
「神子様? どういうことなの?」
「ボクが牧場を脱出したのは神子様にお伝えしたいことがあったからなんです」
「神子ならここにいるよ」
「今は話すことができませんが、そこは許してください」

ジーニアスとレイラがコレットを示せば、ソフィアが目を白黒させる。

「え? あ、あなた……神子様だったの!?」
「ああ、マーテル様! 感謝します!」
「……くそ。何が……マーテル様だよ」
「……ロイド」

ロイドの呟きをレイラはこっそり諌める。幸いピエトロたちには聞こえなかったようだ。

「ディザイアンたちはエンジェルス計画というもので何かを復活させようとしています。魔導砲なる兵器も開発しているとか」
「魔導砲……? それは古代大戦のトールハンマーのことか?」
「詳しくは分かりません。とにかくあの牧場ではエクスフィアというものを使って禍々しい実験が行われています。ですから、どうか神子様のお力でエンジェルス計画を食い止め、我々をお助けください」

今目覚めたピエトロは、クヴァルが倒れたことを知らない。

「安心しなよ。クヴァルは倒したし収容された人たちも助け出したから」
「あんたの持ってきた宝石のおかげでね」
「そうですか! 流石神子様です!」

ピエトロはほっと、安心したようだが、リフィルは難しい顔をする。

「でも魔導砲のことが気になるわね」
「牧場を全て潰したわけではないから、計画が完全に潰えた訳ではないですしね」
「そうだな。しかし詮索したところで仕方あるまい」

話は終えて、ジーニアスが問うたのは、クララのこと。

「この術を使えば、クララさんも助け出せるんじゃない?」
「そうだな。いずれ時間があればシルヴァラントをさ迷っている彼女を助けられるだろう」

礼を告げるピエトロたちを後にし、皆は宿屋を出た。

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