彼女への想い
ハイマで、竜に乗って救いの塔周辺を廻る観光をしようという奇特な人物に出会った。
コレットたちが神子と知ると無償で竜を用意してくれるということで、明朝に出発ということになった。
それまでは自由行動だ。
「…………」
レイラは崖から何をするでもなく、景色を眺めていた。
世界再生を成し遂げる時、コレットは戻ってこない。テセアラも、衰退する。
色んな問題が山積みだけど、それしか道はないから、コレット自身が決めたから。だから、コレットを最後まで守り抜く。
「……コレットには、笑っていてほしかった。なのに、笑うことなんてできない……なんて、不条理なんだろう」
何となしに呟いた言葉は、いつの間にか傍に来ていたロイドに届いていた。
「最後まで笑って、何の心配もなく世界を再生できる……そう信じてた私が馬鹿みたい」
「だよな。テセアラのこともあるし、コレットが天使になったらどうなっちまうか……」
「…………」
レイラは唇をかみしめた。ロイドはまだ、知らない。
「……コレットの元に行って。きっと、ロイドと一緒にいたいと思うから」
「レイラ?」
ロイドに背を向け、俯く。その声色に、ロイドは訝しむ。何かを堪らえるように震えて、とても不安げで。
「……泣いてるのか?」
「……泣いてない。ねえ、早く行って。お願いだから……」
伸ばされた手を払い、決して振り向こうとしないレイラ。
ロイドは躊躇するが、レイラが取り合う気がないと分かると、やがてレイラの元から離れていった。
「っ……」
周りに誰もいなくなって、箍が外れた。レイラはその場にしゃがみこみ、声を殺して涙を流した。
コレットがあまりにも可哀想で。何も出来ず、何も知らない自分に苛立って。
そんな万感の想いが、溢れかえった。