再会の時
初めて降り立った、繁栄世界テセアラの地。
エルフの血を持たないレイラにマナは感じ取れないから、その空気感はシルヴァラントとそう変わらないように思う。
「皆のいる所は確か……フウジ山岳……」
テセアラの神子の連絡で、今はフウジ山岳に向かっているということだ。
テセアラの地図を頭に思い浮かべる。ここから西に飛べば着くはず。
レイラは羽を広げ、飛び立った。再び、皆と共に在るために。
飛びながら、レイラは体に悪寒が走るのを感じた。
トリエットの時と同じだ。ロイドが危ない。そう確信して、飛ぶ速度を上げる。
山岳の付近まで来て、レイラは山道に降り立ち、羽をしまう。
羽を見られて、クルシスの手の者と思われて拒絶されるのが、恐ろしかった。もし受け入れられても、警戒される。そうなるのは嫌だから。
「ロイド、皆!」
「レイラ!? どうしてここに!」
山道を駆け上がり、頂上まで辿り着く。
予感は当たっていた。テセアラの神子と、見知らぬ少女をパーティに加えたロイドたちは、心を失ったままでいるコレットを除いて皆魔科学の檻に捕らわれて、動けない状態にあった。
そして、彼らをそこに閉じ込めた人物は、
「……ユアン様……」
「まさかお前が現れるとはな、レイラ。これは思わぬ幸運だ」
3年前、レネゲードを引き連れてレイラを襲った張本人、クルシスの四大天使が1人、ユアンだった。
「お前もロイドも貰い受ける!」
「お断りします。私はあなたの元には行きません。ロイドも、渡しはしない!」
レイラは剣を抜き、ユアンに突きつける。
「……どういうことなんだ、レイラ?」
「詳しいことは分からない。分かるのは、この人が私とあなたを狙っていることだけ」
ユアンが自分たちを狙う理由にも見当がつかない。だからこそ、ユアンの元へ下れない。
「あなた、まさか……」
「話は後にしましょう、先生」
檻の発生装置を探し、止めるなり壊すなりすれば皆を解放できるが、ユアンがそれを許さないだろう。
コレットには全く手を出そうとしていない以上、彼女の反応は期待できない。流石にレイラ1人でユアンと戦うのは無理だ。
「…………」
何とか隙を見つけて一太刀、そう思っていたら。
「ユアン様ではありませぬか。何故、このような場所に?」
プロネーマが、乱入してきた。
ユアンに問いかけつつも、傍目でレイラに何か言いたいげに視線を寄越してくる。
「それは私の台詞だ、プロネーマ! 貴様たちディザイアンは衰退世界を荒らすのが役目だろう!」
「私はユグドラシル様の勅命にて、レイラとコレットを追っておりました。コレットをこちらにお引き渡し下され」
「なっ……!」
プロネーマはユアンがレネゲードということを知らない。ならばユアンに剣を向けたことは、クルシスに反旗を翻したように映る筈。
どちらにせよ離反するつもりだったとはいえ、非常にまずい事態だ。
「よかろう。だが、神子を渡すかわりにロイドとレイラは私が預かる。それでよいな?」
「そやつに関しての命令は受けておりませぬ故、ユアン様のお好きになされませ。レイラの方も、どうぞユアン様に」
こうなったら、開き直ってしまえと、レイラは咄嗟にプロネーマとコレットの間に立ちはだかる。
「コレットは渡さない!」
「お主ごときに遅れは取らぬよ」
「うっ!」
プロネーマの放った術でレイラは軽く吹き飛ばされる。
「コレット!! 行くな!」
「ホホホ。無駄なことよのう。心を失った神子にお主らの言葉など届かぬぞえ」
叫ぶロイドを嘲笑い、コレットを連れて行こうとしたプロネーマは、それに気付いた。
「なんと。クルシスの輝石にこのような粗雑な要の紋とは? ……愚かじゃのう。このような醜きもの、取り除いてくれようほどに」
コレットの首元には、ペンダントがかけられていた。それには、要の紋がついている。
プロネーマはそれを手に取り、チェーンを引きちぎろうと引っ張り――
「や、やめてっ!!」
そこに、透き通った声が響き、それを静止させた。