橋の陰
「カギがかかっています」
グランテセアラブリッジの傍に備え付けられた人工海岸へ続く階段。どういう訳か閉ざされていた。
「ん。ホントだ。こんなもの、てきとーに」
ロイドが鍵を弄る。
「ほら開いた」
するとほとんど間を置かずにあっさりと扉は開く。
「すごーい! 流石ロイド!」
「手先だけは器用だよね」
「顔は俺さまに負けてるけどな」
「顔は関係ないだろ!」
ロイドがムキになってゼロスに反論する様子に周りはみんな笑っていた。
「……橋が見えるわね」
階段に出ると、巨大な橋が見渡せた。
「……ホントだ。あの飾りみたいのはエクスフィア?」
「そうだよ、コレットちゃん」
欄干には多数のエクスフィアが取り付けられている。これが動力源となり、跳ね橋を上げ下げしている。
その総数、3000。3000人分の命がここにある。
長い間の使用の弊害か、橋自体には結晶化が侵食している。
「……ちょっと気持ち悪いね」
「確かにグロテスクだな。エクスフィアの成り立ちを知っちまうと、そんな風に言うのもどうかと思うけどよ」
「……そだね」
いやに憂いのあるコレットの様子が気になった。
「コレット?」
「どしたの、レイラ」
「それはこっちのセリフだよ。……何か、あった?」
「ううん、何もないよ」
何となく、嘘だとは分かったけど、コレットがやけに触れられたくなさげで。この話は終わりにすることにした。
階段を降りた先には、くちなわがエレカーを出して待っていた。
「待ちくたびれたぞ。これがエレカーだ」
「よーし、ロイドくん。さっきのパックを使ってみ?」
「えっと……こうか?」
ゼロスに言われるまま、ロイドが恐る恐るウィングパックをかざせば、エレカーは小型に縮小されてパックに仕舞われる。
「うわっ!?」
「すご〜い! 不思議だね〜!」
「うわー! どうなってるんだろう!」
ロイドやコレット、ジーニアスは初めて目の当たりにする光景に飛び上がる。
「……どうして、見覚えがあるのかしら」
「……先生?」
「……い、いえ。何でもないのよ」
リフィルは訝しげにそれを見ていて、プレセアが珍しく疑問を呈した。
「な、ちゃんとエレカーしまえただろ?」
「消えた! すげー! すげー! 出してみよう」
再びパックをかざして、エレカーを取り出しては喜ぶロイドたち。
「……はしゃぐのはそのくらいにして、そろそろ出発したらどうだ」
くちなわが半ば呆れ気味に口を挟む。
「そうだな。
よーし、エレカーか! 盛り上がってきたぜ!」
「どうせすぐ飽きるクセに……」
「ほんとにね」
意気込むロイドにジーニアスとレイラはやれやれ、と肩をすくめた。
「わー、海だ〜!」
「……海ね」
「……海です」
喜ぶコレット、こめかみを押さえるリフィル、とりあえず反応を見せるプレセア。三種さまざまだ。
「さあいこうか。目指すは、サイバックだよ!」
「しいな、これを持っていけよ」
くちなわからしいなに手渡されたのは鶴を象ったお守り。綺麗な趣向が凝らされている。
「お守りかい?」
「ああ、気を付けてな!」
皆、エレカーに乗り込んだのを確認して、しいながウンディーネを呼び出す。
水のマナを充填し、海上を進んでいった。