ミズホの里

ガオラキアの森を横道に逸れて抜けた先。そこにひっそりと、外部から隠れるようにミズホの里はあった。
人々の服装や建物、何もかもが違ってて珍しい。けど雰囲気は普通の小さな村と大きく変わりはない。
しいなの先導で里に足を踏み入れるロイドたちを、里の者の1人、おろちが見咎めた。

「しいな! 外部の者を里に招き入れるとはどういうことだ!」
「ああ、処罰は覚悟の上サ。副頭領に伝えてくれ。シルヴァラントの仲間を連れてきたって」
「シルヴァラントの……」

おろちは得心がついたようにロイドたちを見やる。

「貴行らは衰退世界シルヴァラントの人間か」
「俺さまは違うけどな」
「……分かった。しいな、お前は俺と来い。貴行らは頭領の家の前で待たれよ」

おろちとしいなは頭領の家に向かっていく。皆はそれに着いていき、その前で彼らが戻ってくるのを待つ。

コレットが囚人を肩から降ろし、地面に寝かせる。

「……?」

程なくして、男は目を覚ました。

「あ、目が覚めたみたい」

男は見たことのない里に驚いたようで周囲を見回す。

「こ……ここは……」
「ミズホの里です。名前自体は聞いたことある筈ですよね?」
「あんたは俺たちの捕虜だ。暴れたりするなよ」
「状況も分からないまま、やたらに暴れるような無粋者ではないつもりだが」

いささか呆れたように男はおとなしく呟く。どうやら理知的な人物なようだ。
目覚めた時こそ動揺していたが、すぐに落ち着きを取り戻した様子。

そうしていると、話は終わったのか、家の中からおろちが出てくる。

「副頭領がお会いになるそうだ」

それに了承し、家に入っていった。

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