クリミア軍進撃 1

無事に森の復活も遂げられた。虐殺のことはまだ神使個人が謝罪しただけで、問題は山積みだが、大きく前進した。
まさか、あの事故のような出来事からここまで大きな変化を生むだなんて。

「さて、俺たちはフェニキスへ帰るぞ」
「待ってください、ティバーン」

帰路につくべく進路をとろうとするティバーンたちをリュシオンが引き止めた。

「どうした?」
「このままフェニキスには帰れません。彼らに、この恩を返したい」
「と、言うと……クリミア軍と一緒に戦いたいってか?」
「はい」

リュシオンの頼みに皆、面食らう。

「何を仰るのですか、王子! 確かに呪歌の力は強力、彼らの力になります。けれど、戦いに身を投じることがどれだけ危険なのか……」
「そんなことは承知の上だ。それでも、このまま帰ることなどできない」

ミリアは溜め息をついた。

「鷹もそうだが、鷺も礼と義を重んじる性質だった、そういえば……」
「俺たちからすると、簡単に裏切るお前らの方がどうかしてると思うぜ」
「同感だ……」

こめかみを押さえぼやけば、ヤナフとウルキに嫌味を言われる。

「……リュシオン王子が売られたのは我ら鴉の責任。私はその責任を取って、王子をフェニキスに送り届けたい。王子が帰らないなら、私は帰るまで同行することになりますが……」

鷹の民は鴉にあまり友好的ではないし、リュシオンは鴉の者を拒絶している。それでも、これだけは譲れないとミリアは駄目元で申し出てみた。

「構わねえだろう」
「王!?」

あっさりティバーンの了承が下り、ヤナフやウルキは勿論、ミリア自身も驚く。

「わざわざたった1人で駆けつけてきたんだ、そのくらい本気だってのは分かる。リュシオンさえいいのなら、一緒にいさせても平気だろう」
「私は、構わない」
「……ありがとうございます」

ミリアが思ったより、リュシオンはミリアに心を開いてくれていた。それが少しだけ面映ゆくもあるが。

セリノスの一件により神使から一軍を貸し与えられ、クリミア王女から爵位を授かったアイクは、クリミア再興軍として、進軍を開始することになっている。

(と、なればデインについたキルヴァスともぶつかる……大丈夫)

ミリアはリュシオンとリアーネに読まれないよう細心の注意を払いつつも、その胸に覚悟を宿す。
責任を果たすために国に牙を向ける。なんて滑稽なことか。それでも、これも国のため。自分たちのしたことへの尻拭いだ。そう、心の中で自分に言い聞かせる

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