ダルレカの攻防 1

デイン王都ネヴァサを目指す進軍は、ダルレカ領まで辿りついた。
聞くところ、ダルレカはジルの故郷。恐らくは、顔見知りや家族とぶつかることになる。更にはジルを気にして落ち込んでいるアイクとミストの2人。
ただでさえ心配事だらけなのに、デインは考える時間を与えてくれない。

「河を氾濫させ足止め……卑劣なことだ」

水門を開き、河を氾濫されたのだ。泥にまみれ、進軍もままならない。
完全に水に呑まれる前に、水門を制圧して水を止めること。それが今回の目的。

「……父上、何故このような……」

ジルは出撃を決めた。だが目の前の惨事にただうち震えるばかりだ。

「……ジル、戦場に出たなら油断は命取り。考えるのは後だ。敵が来る!」
「……え、ええ!」

意を決して、ジルは顔見知りの者たちを手にかけていく。
その様子はまるで、少し前のミリアを見ているような気持ちにさせた。

「……私も、ヤキが回ったな」

今になって、ミリアとキルヴァス兵が戦うのを止めようとしたアイクたちの気持ちが分かるなんて。
皮肉だな、とミリアは苦笑した。

水を止めるべく水門への進軍を急いでいく。

「父上!」

水門の前には将が陣取っている。ジルが、将と相対する。

「お前……ジルか!?」
「……どうして……? どうしてこんな愚かなことを……。
今すぐ、水門を閉じてください! 畑はもうだめでも……家屋だけならまだ救えるかもしれません!」
「……できぬ」

ジルの説得にも、応じない。

「父上……っ!?」
「……水を止めたくば、この場で父を仕留めよ。……他に、方法はない……」
「何か……理由があるのですね!? こんなこと……父上が望んでなさるわけがない」

ミリアの目から見ても、その行いに対し心苦しく思っていることは分かる。それなのに頑なに水門を閉じようとしないのは、或いは上からの圧力か。

「ジル……退いてくれ……頼む! それができぬなら、父を倒せ! もう、時間がないのだ……!」

こうしている間にも、水はどんどん溢れている。
ジルはどうするか、ミリアはただ見守るだけだ。父につくならジルを討ち取るのみ。或いは――

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