王なき王都 2
城内を攻め込んでいき、玉座を目指していく。
ミリアは先導していたアイクが玉座の間の入口で立ち止まっていることが気にかかり、様子を伺う。
「……互いの利を主張すればこそ、戦いが起きる……どちらも退けないのであれば強者が生き残るまで。私は私の利を持って……あなたを倒します」
玉座で待ち構えるは、アシュナードではなかった。
赤竜――大陸最強の強者。少女とはいえ、その力は強大。
「……嘘だろう」
まさか本当に竜鱗族がいるだなんて。予感が的中してしまい、ミリアは戦意を失いそうになる。
「ミリア、どうした!?」
「あ、ああ……。退くことはできない、か」
竜鱗族に挑もうとするアイクに驚くも、ミリアはそれを助けるべく化身した。
「キルヴァスの鳥翼族……。我々竜鱗族の力を知らないわけないでしょうに……向かうというのですか?」
「…………」
ミリアとて、今すぐ逃げ出したいくらいの気持ち。だが、この竜かクリミア軍。どちらかが倒れるまでここから逃げ出すことはできない。
赤竜に少しずつ攻撃を加えていき、数人がかりでようやく倒すことができた。
「……強い、ですね。私の負けです」
「おとなしく降伏しろ。命までは取らない」
「それは……できません」
「何!?」
「私は……あの方の元へ戻らなくては……」
満身創痍の体を何とか動かし、赤竜の少女はこの場から逃げ出そうとする。
部屋の入口にはいつの間に来たのか、ナーシルが佇んでいる。アイクは彼に、彼女を捕らえようと頼むが――
「……すまない」
少女を見逃し、逃走を許してしまう。
「…………」
ますます分からない。争いを厭う竜がここまでする理由が。
兵に拘束されたナーシルがアイクに向けて何事か呟く。
「……パルメニー神殿を調べてくれ……」
「……何だって!?」
その場所に、手がかりがあるというのだろうか。