1人、歌う 3
「まさかあんな戦いをするとは思わなかった……」
「でも、司祭様たちがみんな無事でよかった……」
傭兵を全て倒し、司祭は全員無事に解放できた。
不測の事態は起きたが、無事、予定通り神殿を調べることができるようになった。ミリアはミストと共にのんびり歩き回っている。
「……あれ、リュシオンさん?」
「王子?」
リュシオンはある部屋の扉の前で立ちあぐねていた。
「ミリア、ミストも。すまない、ここに、何かがある気がするんだ。開けてもらえないか?」
「随分重そうな扉ですね……何があるんでしょう?」
やけに堅牢な扉は、鷺の身で動かすことは難しいだろう。ミリアとミスト2人がかりで全体重をかけて押し、2人共軽いため中々動かず悪戦苦闘の末に扉は重い音をたて開く。
「っ、これは!?」
部屋の中を見て、ミリアは愕然とした。
「…………」
部屋の壁の、そこら中に古代語の文字が書かれている。
リュシオンは何も言わず、それを読み解いていく。
生憎、ミリアは古代語を耳で聞いて意味を解することはできるが、文字までは読めない。それでも、嫌な予感がする。
「ミスト、アイクを呼んでもらえるか?」
「う、うん……」
ミストは駆け足でアイクを探しに行く。
ミリアは、胸がざわつく思いだ。こんな場所に古代語が書かれている。その意味が解りたくない、信じたくない。こんな、日の光の一片も差さない部屋で。
程なくしてミストがアイクたちを連れてくる。やはり魔道に通ずるセネリオなら多少なりとも読める様子だ。
この様子なら時間もかかるだろうと、リュシオンのみを残して他の者たちは部屋から出て行った。