オルリベス大橋

デイン=クリミアの国境に位置する、オルリベス大橋。
そこを越えればクリミアに入れる。だが、デインがただで通してくれるはずがなく。

「クリミア王宮騎士団5番小隊隊長、ケビン、参る!」

やはりクリミアの関係者なら士気もひとしお高い。意気揚々と突撃していった騎士ケビン。だが、

「お、おおっ!?」
「どうした!?」

何かが崩れる音に振り返ると、橋にできた穴に見事に嵌ったケビンが。

「……落とし穴か」
「単純だけど、効果は抜群な罠だな。オレたちには厄介だ」

この戦いで参戦したガリアの戦士ライがぼやく。
空を飛べるミリアたち鳥翼族や天馬や竜に乗るマーシャやジル、それにタニス率いる神使親衛隊など少数を除けばこの軍の大半は地を往く者たちだ。
おかげで進軍はかなり遅れ、トドメには後ろから竜騎士の部隊に挟み込まれ。

「全く、どうするんだ、これは」

落とし穴に嵌ったアイクを引っ張り出しつつミリアはため息をついた。

「…………」
「ジル?」
「……ハール隊長……!?」

竜騎士の部隊を凝視していたジル。乗り手の姿がはっきり分かる距離まできたところで、一目散にその中の1騎へと向かって行った。

フィザット卿の元部下、ジルの元上司である男。
もはや国の元につくのはうんざりとでも言うような様子だが、ジルのため、クリミアについてくれるようだ。

「聞いてくださいよ! 隊長ったらひどくって……」
「分かった、分かったから……」

ミリアは飄々とした態度のハールに辟易したジルの愚痴を聞き流す。
戦いは、エリンシアの姿を見つけて援護してくれたクリミアの遺臣の力もあり無事に決した。
クリミア王女は、無事故郷に足を踏み入れることができたのだ。
クリミアに入り、民の力も得て、この戦いは、これからが正念場となる。

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