山岳を越えて 1

無事、軍にクリミアの遺臣を加えたことで、また戦況は大きく動く。
ガリアから援軍が来るということで、彼らとの合流のため、進軍を急ぐクリミア軍。
合流予定地のマレハウト山岳で、デイン兵の待ち伏せを受け、交戦していた。

「この山道に落石……単純ながらも、厄介だな。橋の時と同じだ」
「ホントだよ」

山頂ももう少し。敵も少なくなってきて、ミリアはライと少し気の抜けた会話をしていた。

山頂に着き、見える敵は全て掃討した。だが……

「……敵はこれだけか?」
「……下から見た時は、もう少し多いように見えた……」

あたりを見渡すと、別な場所の落石器と、デイン兵がいた。

「かかったな、くらえっ!」
「まずい、逃げる間が……!」
「きゃあっ!」

逃げ場もない。絶体絶命か、と思った時。
鷹の、嘶きが響いてきた。
岩を落とされる前に残った全てのデイン兵を一瞬で倒してしまい、こちらに飛んでくる。そんなことができるのは――

「よぉ!」
「ティバーン! 来てくださったのか!?」

リュシオンが歓喜の声を上げる。

「元気か、リュシオン。それから……クリミアのご面々」
「どうして、ここに?」
「デイン潰しに参加しようかと思ってな」
「それは歓迎するが……なにか、あったのか?」

アイクが疑問符を浮かべる。突然のことで流石に戸惑うのだろう。

「私が呼んだのだ。……デイン王を確実に倒すためにも……頼れる戦力は多い方がいいだろう?」
「そういうことか」

なるほど、と納得したアイク。
ミリアはうーん、と唸る。

「……確かに、フェニキス参戦は何よりも心強い。ですが、私の目にはやけに急いで向かってきたように見えます」
「そうだ。確かに、リュシオンに乞われたのもあるが……」

ティバーンが言葉を濁す。確実に、何かがあったことは見て取れた。

「……とりあえず、獅子王と落ち合ってからにしよう。麓でお待ちかねだぜ」
「わかった。みんな、ここでは休まず一気に山を下りるぞ」

アイクの指示に頷き、軍は山を下った。

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