宿命の刻 2

漆黒の騎士の鎧は女神の祝福を受けた代物。普通の攻撃は通じない。
幸い、アイクがそれに通用する剣を持っているということで、漆黒の騎士はアイクに任せることにして、城を攻めていく。
漆黒の騎士は城の奥で待ち受けている。アイクの意向で、1人で行かせた。誰かの同行を許さないティアマトにミリアはある疑問をぶつける。

「アイクにしか倒せないのだから、アイクに任せるにしても、助けは必要じゃないのか?」
「いいえ。アイクがグレイル団長の死を本当に乗り越えるためには必要なことなの」
「分からなくもないが……。だが、それならもう1人、いるだろう?」

ミリアの視線の先には、意を決した顔つきのミストが。

「ミスト……!? でも……」
「漆黒の騎士は、あの子にとっても仇だ。なら、行かせない理由はない。あの子には、資格がある。アイクと漆黒の騎士の戦いを見届ける、その資格がな」
「そう……ね……」

ティアマトもミストを向かわせることに納得した。

「……ぜったいに、殺させはしないから……!」

震える身体を叱責しながら、ミストも、城の奥へと消えて行った。

アイクたちの無事を祈りながら待っていると、突如城が大きく揺れる。

「これは!?」

そこに、思わぬ人物に警告された。

「皆、この城は間もなく崩れる。脱出を!」
「ナーシル!?」

軍に捕らえられていたがクリミア入りと時を同じくして姿を消していた筈のナーシル。

「っ、アイク……!」

セネリオが奥に向かおうとするのをナーシルは引き止める。

「アイクたちのことは私に任せてくれ……頼む……!」

その切実な様子は、こちらを騙そうという意図は感じられない。

「今は彼を信じるしかない。急げ、軍師殿も!」

心配な気持ちは同じだが、このままではミリアたちも死んでしまう。ナーシルを信じ、皆は城から脱出した。

傷だらけになりながらも少し遅れて戻ってきたアイクたち。その表情は達成感に満ち溢れていて、戦いの結果がどうなったか、聞くまでもなかった。
ナーシルが連れてきた、かつてデイン王城で戦った赤竜、イナ。漆黒の騎士に処刑されそうになったいたそうだがそこは流石は竜鱗族。命を取り留めた。
ナーシルの孫である彼女はリアーネの居場所を知っているとのことだ。これからの活路が開け、ミリアは少しだけ晴れやかな気持ちになった。

[ 36/84 ]
prev | next
戻る