歪んだ魔塔 1
リアーネはグリトネア塔に捕らえられている。
イナからもたらされたその情報を元に、別働隊を率いてリアーネ救出にアイクたちは向かっていた。
塔に近づくにつれ、ミリアは背筋に冷たいものが走った。
「嫌な感覚だな……」
「あんたもそう思うか?」
ライの問いかけに頷く。
鷺ほどでないにせよ、同族の気を敏感に感じ取れる性質がこの時ばかりは嫌になる。いや、この場所に嫌悪しているのはミリアだけではない。それくらい異常だった。
塔の違和感の正体を教えてくれたのはイナだ。
「……あの塔の中には、薬を与えられ、あるべき姿を歪められたラグズが何匹もいます……」
「あの、化身しっぱなしのやつらか?」
デイン軍に加えられた歪められしラグズ、俗に言う【なりそこない】だ。
少なく見積もっても30。獣牙の虎と猫に、鳥翼の鷹と鴉、そして竜鱗族までいるという。
10に満たない数だが、イナより俄然強い者たちだとか。
「なんにしても急ごうぜ、日が落ちてきている。……情けねえ話だが、俺たち鳥翼族は、暗闇じゃまともに動けねえ」
「そうですね。もちろん、敵に回っている者たちにも同じことが言えますが……」
「反対に、オレたち獣牙族は暗闇でもなんのその。……敵の数によっては、ヤバイことに……」
「獣牙族が一番沢山います。……ガリアが近いですから」
「……まずいな」
イナの情報はこちらの士気を下げかねないようなものばかりだ。
我慢ならないライがわなわなと震える。
「あ、あんたな……本当にオレたちに味方する気あるのか?」
「……? はい、もちろんです。ですから正確な情報を……」
その心がけは間違ってはいない。いないのだが、もう少し言葉を選ぶといったことはできないのか。
「ナーシル!」
「どうだい、ライ。私の孫娘は有能だろう?」
清々しいほどの笑顔で言い切ったナーシル。
「……じじバカだ……」
ライは項垂れるのみだった。
その上情報を聞いても動じないアイクに振り回されていて、
「……苦労してるな」
「どうも……」
ミリアはつい、同情の声かけをしてしまった。