帰還 3

ミリアは翼を広げ、化身してデインの兵たちを討ち取っていく。
流石はアシュナードを直接守る精鋭。一筋縄ではいかない。
女神の加護の与えられた鎧を纏うアシュナードに直接害をなせるのは、同じく加護を与えられた神剣を携えたアイク、それすら越える力を持つ強者――竜鱗族、或いはラグズの王者のみ。
この場に来ているラグズの王、ティバーンやネサラ、それに獅子王の影武者であるジフカは別の隊を指揮しているからここにはいない。ただでさえ少ない太刀打ちできる者の、更に一部だけでアシュナードを倒せというようなもの。
彼らがアシュナードだけに集中できるように、ミリアたちは周りのデイン兵をなるべく減らしていった。

「そろそろみたいだぜ」

兵たちも随分減り、ライに声を掛けられて見れば、アイクたちがアシュナードをあと1歩で、という段階まできていた。

「我が敗れる、か……く……くくくくくく……まだ……お前の力……見尽くしておらぬ……」

愉快そうに笑うアシュナードは、懐からある物を取り出す。

「メダリオン……!?」

この戦いで起きた負の気で、強く蒼い炎を纏ったメダリオン。
その影響は、天の色を変えてしまうほど。
そして、そんなものに直接触れてしまえば――

「逃げろ! 逃げるんだ、みんな!」

アイクの必死の怒号が響き渡る。メダリオンの暴走の恐ろしさを知るアイクの叫びとは裏腹に、

「ふしゅうううぅぅぅぅ……よい心地だ……」
「メダリオンを手にして、まだ、正気を……?」

アイクも、他の者たちも驚きを見せる。アシュナードにはまだ理性が残されているように見える、否。
元から、もはや正気ではなかったのかもしれない。だからこそ、メダリオンに触れてもそのままでいられる。

「くくくくくく……参る……」

強い負の気でアシュナードは更なる強さを手にした。
このままでは、勝てないと、他の部隊を指揮している王者を呼び寄せることになった。

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