流れゆく雲に 2

メリオル近郊で、ついに追い詰められてしまった。

「下劣な輩が……!」
「近寄るでないわ、不届き者め!! 下がれ! 下がらんか!」
『ミリア、ニアルチ。この人たち、どうしてを意地悪するの? 悪い人たちなの?』

未だ状況のよく分かっていないリアーネも、流石に不安は感じている。

「リアーネお嬢様、ご心配めされるな。この老いぼれとミリア嬢様が命に代えてもお守りいたしますぞ」

どうやら彼らはリアーネを主に売り渡そうという心積りの様子だ。下卑た笑みでリアーネを見ていた。
ニアルチがそれに激昂する。

「お嬢様を物扱いとは……ニンゲンども、そこへ直れ! キルヴァス王侍従ニアルチ、やすやすと後れはとらぬぞ!」
「同じく。キルヴァス王側近の私が相手してやる」
『ミリア、ニアルチ!』

ラグズの王は強さで決められる。その王には遠く及ばずとも民に敬われる存在のミリアが、経験という誰よりも強い武器が豊富にあるニアルチが。強さでは申し分ないがたった2人で竜騎士一部隊を相手にするには心許ないのが本音だ。

「おい、お前たち、そのカァカァうるさい鴉は叩き落とせ。女の方は中々上玉だが、年老いた鴉など誰も欲しがらん」
「ま、またしても許しがたき暴言! 泣いて謝っても許さんからな。覚悟するがいい!」
「……はっ、ただで売られるものか」

ミリアも化身して構える。隊長格の男を落とせば彼らも怖気づいて逃げ出すだろうと狙いを定めていると。

「こらーっ! 待ちなさーい!!」

3年ぶりに聞いた懐かしい声が響き渡り、天馬に乗った女性が2騎、こちらへ飛んで来た。

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