流れゆく雲に 3

聖天馬騎士団を辞めてクリミア王宮騎士になったマーシャ、そして自ら天馬を駆るエリンシアが、偶然通りかかって駆けつけてきてくれたのだった。
マーシャと竜騎士が言い争うが、途中でエリンシアの身分を明かそうとしたのをエリンシア自ら止めた。そしてエリンシアが説得に出る。

「ベグニオンの竜騎士たちよ……1度だけ警告します。すぐにここから去りなさい。私はクリミア女王に縁ある者。クリミア領を侵す者は撃退しなければなりません」
「はっ! 女王だと? 我ら帝国を頼って国を得ただけの女ではないか」
「ゆ、許せない……! すぐに取り消しなさい!」

エリンシアのことも鼻で笑う竜騎士にマーシャが更に怒りを募らせる。
更には彼女たちも無視してリアーネのみに狙いを定めた様子だ。

「……言葉だけでは分かっていただけないようですね。仕方ありません……。ミリア様、ニアルチ様! 私たちがこの者たちを引きつけます! その間にリアーネ姫を連れてお逃げください!」
『エリンシア様、でも!』

エリンシアの計らいはありがたい。だが、逃げない理由が出来た。

「これはかたじけない。しかし、レディ方を残して逃げることなどできはしませぬぞ。わしも断固戦いますじゃ!」
「リアーネ姫に対する狼藉のみならず、エリンシア女王への侮辱もあっては、黙って逃げる訳にはいかないでしょう?」
『私も! 絶対、負けないんだから!』

戦う方針を取る3人を止めることは流石にしないようだ。
マーシャもエリンシアに耳打ちする。

「エリンシア様、聖竜騎士団はごろつきが多いものの腕は確かです。だから、こちらも遠慮はいりません。手加減なしでいきましょう!」
「ええ、ぶっとばして差し上げますわ!」

思わぬ心強い味方を得られた。エリンシアの気合を入れた喝と共に戦いの火蓋は落とされる。

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