流れゆく雲に 4

マーシャの言葉の通り、彼らは意外と手強かった。
リアーネが連れさらわれることのないように庇いながら応戦するが、人数がやはり心許ない。
せめて、あと1人だけでも戦力があれば話は変わるが……。
ふと、竜騎士が一騎、近くを通りかかった。こちらの戦いに気づいてない筈がないが、見て見ぬふりをして素通りしようとしている。
それだけならよかったのだが、その竜騎士というのが――

「あー! ハールさん! ハールさんじゃないですか!」

マーシャが見つけて引き止める。3年前、共に戦ったことのある竜騎士ハールだったのだ。

「……よう。相変わらず元気そうだな」
「のんきに挨拶してる場合じゃないんですよ!」

マーシャが端的に状況を説明して協力を仰ぐが、ハールはやる気を出さない。というか、彼を動かせるのはジルくらいのものだろう。
とはいえ、マーシャが切羽詰まった様子で頼むと、流石のハールも無碍にできないのだろう。

「……そんなに困ってるのか?」
「あいつら、思ったより強くって。私だけじゃ、エリンシア様をお守りできないかもしれないんです。だから……」
「……仕方ない。全く気は進まんが……手を貸してやろう」
「あ、ありがとうございます!」
「さて、やるとなったからには手を抜かずいくか。……いくぞ、相棒」

ハールはやる気こそなさげだが決して手は抜かない。頼もしい味方が来てくれたことにミリアは安堵する。

「しかし、あいつを言いくるめるとはな……とんでもないことをするな、マーシャ」
「そうですか? 一緒に戦ったことだってあるんだから助けるのは当たり前のことでしょう」
「…………」

マーシャの言葉に耳が痛くなった。これからの雲行き次第で、色んなものを裏切るかもしれないミリアたちにとって、その言葉は心に来る。

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