流れゆく雲に 5

無事に竜騎士たちを退けて、安全になった。
リアーネにはかすり傷一つない。

「リアーネ姫、怖い思いをさせてしまいましたね。大丈夫ですか?」
『エリンシア様! 助けてくれてありがとうございます。またお会いできて嬉しいです』
「あの、すみません……私は古代語が分からなくて……」

戸惑うエリンシアにすかさずニアルチが助け舟を出す。ガリアで機会が多かったのだろう、慣れた様子で通訳している。

「こほん。では、この爺めの出番ですな。リアーネお嬢様は、助けて頂いたお礼と再会の喜びを述べられておいでです」

ニアルチの通訳にエリンシアの顔がぱっと明るくなる。

「まぁ、そうなのですか。私もとても嬉しいですわ。ガリア王宮にご挨拶に伺おうと思いながら、公務に追われ、果たせずにおりましたから」
「それはそうでしょうね。国を治めるだけでなく復興のための政策など、やることは多いですから……私も、あなたに会えて嬉しい。元気そうで何よりです」
「ミリア様、ありがとうございます。リュシオン王子もお元気でしょうか?」
『はい、兄様も、元気です』

そうして話は本題、リアーネがクリミアを訪れた理由に。
クリミア王宮に、アイクを訪ねて来たと言えばエリンシアは申し訳なさそうになる。
アイクは半年前に爵位を返上し、王宮から去ってしまったという。
その後はグレイル傭兵団の活動を再開したらしいが、現在の行方は分からないと。
エリンシアはアイクについてはライの方が詳しいだろう、とガリアに戻ることを提案してくれたが、

『嫌! 絶対、会いたいの!』
「しかし、居場所が分からないのではどうにもなりませんぞ」
『捜すもの』
「こ、困りましたなぁ……」
「どうする……?」

断固として帰らないというリアーネ。ミリアとニアルチは困り果てる。
そこにエリンシアが有難い提案をしてくれた。

「……折角クリミアまでおいでになられたのです。このままお帰りになられるより、王宮までいらっしゃいませんか?」
「なんと!」
「私の個人的なお客様としてお招きしますから……そちらのお時間の許す限り、何日でもご滞在ください。その間に、グレイル傭兵団の現在の行方を調べてみましょう。いかがですか?」
『本当!?』
「それは……願ってもないお誘いですが、よろしいのですかな?」

忙しいエリンシアの手を煩わせてまで捜すのは気が引ける。

「ええ。ちょうど私もアイク様にお会いしたいと思っていましたし」
『ありがとう! すごく嬉しいです!』
「ありがとうございます。お嬢様も大変喜んでおいでで。それでは、謹んでお言葉に甘えさせて頂きますぞ」

エリンシアはにこりと笑う。

「こんな素敵なお客様なら、いつでも大歓迎ですわ」

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