女王エリンシア 2

準備は着々と整い、籠城しようとした矢先のことだ。

「ほ、報告致しますっ! 砦の裏門が開き、そこから反乱兵がなだれ込んで参りました!!」

思わぬ事態に動揺が走る。一体どうして。レテがその答えを持ってきてくれた。

「あなたは……庭番の……?」
「砦内を巡回していたら、この男が外に向かって鳥を放ったのが見えたんです。何の意味があるのか聞こうと近寄ったら……いきなり襲いかかってきたんで捕らえました」
「き、貴様っ! 貴様が反乱軍を手引きしたのだな!?」
「……あぁ、そうさ。この国の……クリミアの未来のため正しいことをやった。女王はデインに尻尾を振る裏切り者だ! おれはデインの奴らに家族を殺されたんだ! 奴らと手を組むなんて、まっぴらだ!」

反乱軍の内通者がいたとは迂闊だった。ことごとく先回りされている。向こうはこちらの手筈を知り尽くしてしまっているようだ。
内通者を捕らえはしたが、それで状況が変わるわけでもない。

「それより、砦に入り込んだフェリーレ公の配下たちをなんとかしなくては……」

これまで協力してきた者たちが順に声を上げる。

「私もお手伝いします」
「オぉ、モゥディは女王のタめに戦うぞ!」
「およばずながら、わしもお使いください」
「……クリミアの未来には、エリンシア様が必要です」
「フェリーレ公なんてむさい男に故郷を支配されるなんて……絶対に御免だわ」

皆、エリンシアを信じて戦う決意を固めている。

「ありがとう、みなさん。私はクリミアの女王……もう逃げ隠れしません。……同じ国の民とはいえ、これ以上、和を乱すというのであれば……見過ごすことはできません」

エリンシアも、決意を固めた。
クリミアの平和のために、自国の民と戦うこと。エリンシアにとって1番難しい選択を。

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