女王エリンシア 3

「エリンシア様ー! お待たせしました!」

戦闘配置について間もなく、天馬が1騎飛んできた。

「マーシャ!」
「フェリーレからの帰路、街道は土砂によって完全に塞がれていたんです。でも、あらかじめ旧街道の方も視野に入れて行動してたので、無駄にした時間はほとんどありません。数刻後には、王宮騎士団がこの砦に到着します!」

嬉しい知らせを持ってきてくれたマーシャに、この状況に光明が差してきた。

「ジョフレが……来てくれるのですね……!」
「はい! とりあえずそのことをお知らせするため、私だけ先行しました」
「……ありがとう。よくぞここまで辿りついてくれました」
「王都騎士団は全速力でこちらへ向かっています。彼等が到着するまで、なんとしても持ちこたえましょう!」
「ええ……」

エリンシアの顔つきは先程より明るくなっていた。

「流石、といったところか。向こうもかなりのやり手だが、ジョフレもやるな」

エリンシアの臣下たちは総じて優秀だ。ミリアは関心する。
ミリアも彼らに相応の敬意を払って、ミリアなりに力を尽くしてエリンシアを守ろう。

それから数刻、マーシャの宣言通り、馬の足音が響いてきた。
そして騎馬たちが砦内へなだれ込んでくる。

「エリンシア様っ! クリミア王宮騎士団っ! ただ今、到着致しました! 誇り高きクリミア騎士たちよ! 我らがお守りすべき主君のため死力を賭して戦うのだ!」
「ジョフレ……! ジョフレ、ジョフレ!」

その姿を見て、エリンシアの顔が歓喜に染まる。
王宮騎士団の到着は流石の反乱軍も予測できなかったようで、兵たちのペースに乱れが見える。
その隙を縫って、フェリーレ公に直接攻撃を仕掛けた。
だが、不利と見るや即座に武器を捨ててきた。

「女王よ! 私は降伏する。捕虜としての処遇を希望したい。優しい女王陛下のことだ、武器を捨てて降伏した者の生命は奪えまい……?」

この後に及んで何かを企んでいるような様子だが、エリンシアがその希望に従うのなら、ミリアには何も言うことはできない。何もないことを願うしかない。

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