目覚めの刻 2
「……!」
「ミリア嬢様、動いてはなりませぬ!」
ミリアが目覚めて起き上がろうとする。ニアルチが慌て寝かそうとするが、今はそれどころではない。この違和感は、
「私が倒れてから、大きく移動してないな?」
「はい」
「戦いは終わってないな?」
「今も続いていますぞ」
「それじゃあ……」
この清々しく、一切の負の気を感じられない空気は一体何なのだ。
「……今のは!?」
天幕の隙間から眩しい程の光が入り込む。光が収まってから、外の喧騒が一気に止んだ。ただならぬものを感じて天幕を出ると、信じられない光景が飛び込んできた。
ラグズもベオクもみんな、ある者は武器を振り上げ牙や爪を剥き出しにしたまま、ある者は倒れそうなまま、ある者は攻撃を受けた痛みに呻いたまま、
戦場にいる者たちは皆、石となり動かなくなっていた。
「こ、これは……何が……」
慌てて追いかけて外に出たニアルチも呆然としていた。
「私たちの他には誰かいないのか!?」
ミリアたちだけ助かって他の全ての者が石になるなんてことはない筈。誰か、同じように助かった者がいる筈。
あまりの出来事にミリアは頭が追いつかない。焦燥感に駆られる。
「ミリア、ニアルチ、無事だな!」
飛来してくる鴉が見えて、ミリアは先ほどまでの焦りが一気に引いた。
「王、これは一体……」
「俺にもよく分からねぇ。とにかく石になってない奴を集めてこいって言うんで、集めてる最中だ」
「私たちの他には誰が……?」
「俺が分かってる限りは、神使に、ティバーンに、アイクとその妹と、狼女王や、デインの巫女やそいつと一緒の……確かサザだったな。あとはティバーンの目と耳もいる。それに鷺の民も3人とも無事だ」
無事な者の多くは知ってる者たちのようだ。
「とにかく、話は後だ。行けるか?」
「はい」
ネサラに連れられ、ミリアたちはどこかへと向かっていく。
「ミリア、体は平気か? リュシオンやアイクの妹は立ち直っていたが」
「同じように、嘘みたいに体が軽い」
あんなに淀んでいた負の気が綺麗になくなっているのだ。体調もよくなる。
ネサラの先導で着いた先には、聞いていたよりもそれなりに多くの者が集まっていた。