我が名は混沌 2
「……わたしから、あの者に事情を話しても良いのじゃぞ?」
サナキが提案する。確かにサナキから事情を話せば、許しを、とまではいかなくても情状酌量の余地は貰えるだろう。何とも魅力的な提案だ。けれど……
「……どんな理由があろうと、私たちのしたことの事実や責任に変わりはありません。王も、きっと同じことを言うでしょう」
背負うべき責任は背負わなくては。それだけのことをしてしまったのだから。
ミリアも共に罪を被る覚悟はある。けど、ネサラのことだから彼は1人で全ての報復を受けようとするだろう。それだけが不満だ。
「そうか……それでも一応、キルヴァス王にも聞いておこう」
サナキはそれだけ言って、ミリアの元から立ち去っていった。
頼まれていた食料を届けるため、リアーネと合流した。
「リアーネ姫、怖い思いをしてませんか?」
『ううん、全然。けれど……』
「どうしました?」
リアーネは眉をしゅんと下げる。
『ネサラやミリアが苦しんでるのが、辛いの……』
ミリアはぴたりと手を止める。
「……リアーネ姫、これは私たちの問題ですから、あなたが心を痛めることはないんですよ」
『どうして? ネサラたちが苦しんでるのは嫌。そう思うのは悪いことなの?』
「……その気持ちは嬉しいです。けれど、どうにもならないことですから……」
『ちゃんと伝えたら、ティバーンも、あの人も、きっと許してくれるわ』
「そうでしょうね……でも、それじゃ駄目なんです……」
許す、許されないではないのだ。然るべき裁きはちゃんと受けなくてはならない。
『……一番ネサラを許してないのはネサラね……それがとっても、悲しい』
悲しそうな眼差しで、リアーネはぽつりと呟いた。