我が名は混沌 3

複雑な心境のまま、眠りに就いたが、突然起こされて広場に集められた。

「ミカヤ様! 敵が姿を見せたのですか!?」
「いいえ、まだ……でも……必ず来ます」

ミカヤはそう断言するが、近くにはそれらしき気配は全くない。
具体的に何が来るのか聞いても、ミカヤも分からないの一点張り。
噂で暁の巫女の奇跡のことは聞き及んでいたが、恐らくこの予知もその一端なのだろう。デインを解放に導いたその力、味方につけると中々頼もしい。
そうしているうちに、気がつけば敵と思わしき軍勢が構えていた。
サナキが自ら戦うと主張し、親衛隊もそれに従う。彼女も加えて、こちらも戦闘の準備を整える。
だが、サナキが敵の姿を見て警戒を解く。

「なんじゃ、そなたたち……その鎧は我が帝国のものではないか! よくぞい生き残っていてくれた……。キルヴァス王、皆に武器を収めさせるのじゃ! この者たちは敵ではないぞ」
「神使っ! 迂闊に近寄るな!」

彼らは明らかにこちらに敵意を向けている。

「邪神のしもべに告ぐ。我々は女神アスタルテより、この世界を統べる使命を賜った」
「何を言っておる!? わたしをよく見るのじゃ。ベグニオン帝国皇帝……神使サナキであるぞ!」

彼らはサナキの言葉に聞く耳を持たない。シグルーンによれば、帝国兵は帝国兵でも、元老院側の者たちだそうだ。

「神使サナキは偽りの存在! 神の声が聞けぬ神使など、偽物などに用はない!」
「!!」
「女神は真の御使いに語りかけ、こう命じられたのだ! 審判は下された! 女神に背く異端者に死を! 邪神のしもべたちに裁きを!」

敵の言葉にサナキが明らかに動揺する。シグルーンは静かに憤った。
ミリアはとにかく、言葉をかけてやる。

「……神使、偽りとかこの際関係ありません。奴らを倒さねば私たちがやられるだけ……」

何が何でもこんな所で倒れるわけにはいかないのだ。そこにサナキが何者なのか、だとかは関係がない。
遠慮はいらない。狂った兵たちに挑んでいった。

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