さまざまな歪み 1
導きの塔を目指すミカヤ隊。グラーヌ砂漠に足を踏み入れ、砂漠越えのために休憩をとっていた。
「なあ、そこのあんた」
「……何だ?」
デインの少年剣士、エディにミリアは声をかけられる。
「ずっと気になってたんだけど、おれ、あんたと会ったことないか?」
「……人違いじゃないのか?」
生憎心当たりはない。
「うーん……やっぱりそんな都合のいいことないよな……3年前に、ネヴァサで会った鴉と似てると思ったんだけど……」
エディは明らかに落胆し方を落とす。
「……3年前なら、確かにクリミア軍に同行してネヴァサに来たこともあったが……」
覚えがない。
「それだよ! クリミア軍がネヴァサに攻めてきた時のことだから、おれよく覚えてるぞ!」
「……半獣が珍しくて覚えてただけじゃないのか? 見かけただけなら会ったとは言わないぞ」
「あぁもう、そうじゃなくて……」
「何してるの、エディ」
エディが騒いでるのを聞いたのか、レオナルドが割り込んでくる。
「この人、3年前に会った人とにてるなーって思ったんだけどさ、覚えてないって言うんだよ。ひどくないか!?」
「いくら何でも有り得ないと思うよ……」
半ラグズ思想の強いデインで、ずっとネヴァサにいたエディがラグズであるミリアと会うなんてどう考えても無理があるとレオナルドも考えたのだろう。
「そうだな。ネヴァサを散歩したりはしてたが、いくら何でも……」
「だから、それだって! ラグズが珍しかったのと、ぼんやりしてるなと思って、財布を――」
「……ん?」
確かネヴァサを散歩して、年端もいかない少年に財布をすられた。
「……あの時の……?」
エディの顔を見て、そして記憶の中の少年の顔と照らし合わせる。ベオクの成長は早いから最初は一致しなかったが、確かに同じだ。
「鍛えれば相当強くなれそうだとは思ったが、石化を免れるくらいに強くなったのか」
「うん! ミカヤたちと一緒に戦ってたからな!」
ミリアが思い出したと分かればエディは目に見えて機嫌が良くなり、レオナルドは困惑する。
いきさつを掻い摘んで話したところ……
「強い人だと思ったけど、意外と抜けてるんですね」
「……心外だな」
流石に不注意が過ぎたのは事実だが、そもそもあそこでラグズ相手にスリを図ろうとする方がおかしい。普通なら近寄りすらしないのだから。