さまざまな歪み 3

珍しくミカヤが知らせてくる前に正の使徒が襲来してきた。ユンヌがへそを曲げていた、ということと関係あるのだろう。
そこにルカンの姿もあり、サナキの目の前までわざわざやって来た。

「おや、これは……我が国の神使様に随分とよく似た子供だ。もっとも、偽の神使に……だがな」

わざとらしい様子でサナキを嘲笑う。
サナキは断罪を宣言するが、態度は全く変わらない。頑なにサナキを否定する。
何をもってサナキを否定し続けるのか、問えば余裕の面持ちを保ったまま話し出す。

「そもそも……帝国に君臨すべき神使はベグニオン初代女王たるオルティナの家系に現れる能力者。女神の天啓を受け、災いを予言としてもたらし、幾度も国を救われし御方のこと。
だが、サナキ様……あなたは1度でも女神の御声を聞かれたことはありましたかな?」

サナキはそれを成人していないから、と言うが、ルカンはそれを鼻で笑う。それは元老院が民に言い続けてきた言葉と同じ。都合のいい民の信仰の対象として仕立てあげるために。

「どんな正論も、信仰の前には勝てぬ。だから偽物と知りながらも……あなたを神使として認めなければならなかったのですから」
「!? な、何を申しておる……」
「実は、おられたのですよ。あなたの上に……真の神使たる姉君が」

サナキは驚愕する。
その者は、かつての神使暗殺事件で先代神使ミサハと共に殺されたらしいが。

「…………」

ミリアはちら、とミカヤを見る。本来の神使と同じ力を持つ彼女。だが親無しである彼女がベグニオンの皇族だなんてそんな馬鹿な話はないだろう。偶然だと内心で片付ける。
サナキは聞かされた内容に意気消沈し、膝をつく。
真実か決まったわけではない。それなら、戦って勝てばいいと、自らが勝つと思い込みからの余裕で告げてくる。

「……いつ見ても胸糞悪い奴ですね」
「そりゃ、そうだ」

内心で嘲る偽の神使ではなく信仰する女神が後ろにいるせいだろう。以前よりも随分と大きな態度に不快感を感じながら、戦いを始める。

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