再生 1
短くはない道を乗り越え、ミカヤたちの隊は帝都シエネに辿りついた。
見える所に他の隊の姿はまだない。
「どうやら1番乗りのようだな。早速中に踏み込んで敵を……」
「待つのじゃ!」
意気揚々と閉ざされてる門を開こうとするスクリミルをサナキが止める。
「帝都は魔導の結界に守られ、内部を探れぬのだ。平時なら民の安全を守るために非常に効果的なのじゃが……」
「今は、それが仇になって中の奴らの数や規模が全く分からないってことか」
「その通りじゃ」
「そうですね。私たちだけで中に入って全滅しては意味がありませんから、ここで他の部隊の到着を待つ方がいい」
「……ふむ。じっくり待つのは性に合わぬが、お前たちがそこまで言うのなら……」
猪突猛進なスクリミルといえど、今突入することの危険性を理解してくれたようだ。近くに天幕を張り、他の部隊を待つことで纏まってくれた。
「……けど、あまり待っていられなさそうだ」
導きの塔から光が溢れている。次の裁きまで時間がない証だ。
「わたしたちが無事辿り着きましたから、アイク将軍や鷹王さまの部隊が倒れてることはないと思います」
「それもそうだな」
不安は残るが、それでも彼らなら無事だと、そう信じていられる。
数刻してから、他の隊の1つが到着した。
「帝都の門が閉ざされているな」
「女神ユンヌの指示は『導きの塔へ向かえ』……どうする? この中に入らねば、塔へは辿り着けぬようだが」
「そうだな……」
アイクや狼女王ニケが率いる隊。
互いの無事を喜び、少し待つことを提案していた所に、門が開く。
「うおっ!?」
「!」
「な、なんじゃ!?」
「敵襲か……?」
皆驚きを隠せない。
「いいえ、敵では……」
ミカヤが言い切る前に、中から姿を現した者たちは、
「獅子王……!」
「叔父貴!」
思わぬ人物の姿に驚く面々。
「声に導かれここまで来たのだ」
そこにいたのは獅子王カイネギスとその影ジフカ。それに、
「……一番乗りは、やっぱりあんたたちの隊だったんだな」
「あぁ、着くなり獅子王たちと合流できたんでな。帝都にいる正の使徒どもはあらかた片付けといたぜ」
ティバーン隊の面々だ。先に中で暴れていたようだ。
「……無茶なことをするわ。せっかくここまで来て、やられてしまったら元も子もないじゃない」
ユンヌもちょうど戻ってきた。そして溜息を吐く。
「みんな、よくぞここまで辿り着いてくれたわ。正の使徒の妨害があったにも関わらず、3隊全てが残った……すごいことだわ。みんながここに向かっている間に、私は大陸中の石にならなかった全ての者に啓示を与えたの。それに従って、ガリア王を始め……強力な者たちが合流を果たしてくれた。すべて……私の予想以上よ」
確かに、どの隊も欠員が出るどころか、むしろ人員が増えている。
これなら希望がある、と言いたいが、ユンヌは眉を潜めた。
竜鱗族が問題。流石といったところか、彼らは一部の老臣を除いてほとんどが無事だ。そしてそれが――全てアスタルテの側についたという。
こちら側にいるクルトナーガとイナを除いた全ての竜鱗族が敵として塔の中に待ち受けている。それではアスタルテと相見えることなく全滅してしまう可能性が高まった。
万全の状態で挑むために、その日は帝都内で夜を明かすことになった。