再生 3

導きの塔に溢れる光が、収まった。
そして、アスタルテの力で、一度倒れた正の使徒が心を持たない人形として蘇る。
意地でも、塔に入れさせないつもりらしい。

「倒しても倒してもキリがない……!」

一度死んだ者、強さは大したことないが、疲れを知らず、倒れても何度も起き上がる。それが何人もいてはこちらは疲弊するばかり。
このままでは塔に入ることもままならない。
と、その時。アイクに声を掛けられる。

「鴉王、来てくれないか」
「ん?」

突然名指しされてネサラは些か困惑する。

「これから少ない人数だけで塔に入ることにする」

残った者たちで正の使徒を抑えておき、数人の者たちは中で女神と戦うことにしたらしい。塔の中の戦いは厳しいものになるだろう。そこに王の1人であるネサラが選ばれるのは自然なことだが……

「アイク、平気なのか? 私たちは……」

ミリアは不安を抱える。かつて裏切ったキルヴァスの、その筆頭であるネサラを信用できない者は未だいる。

「デインの連中とも今は一緒に戦っているんだ。あんたたちだって同じだ」

愚問だった。アイクはそういう男だということを忘れていた。

「なるほどな。折角腕を買われたんだ。行ってやるよ」

ネサラも了承する。

「…………」
「ミリア?」

行こうとするネサラの、その腕を掴む。

「そんなに心配しなくても、ちゃんとやることは果たしてやるからよ」
「分かっています。だけど、1つだけ……約束を……」

塔に入るのはこの石化を免れた者たちの中でも特に優れた強さを誇る者たちだ。強さは申し分ないが、どうしても不安は拭えない。

「……必ず、生きて帰ってきてくれ……!」
「……!」

ネサラは自分ひとりを犠牲にしようとする傾向がある。誓約のことが済めば、きっと刺し違えてでも活路を切り開こうとするだろう。それだけは絶対に嫌だとミリアは思う。

「……分かった、約束してやるよ。お前にそんな顔されたんじゃ、死んでも死にきれねぇ」

今にも泣きそうなミリアの顔を見て、ネサラはバツが悪そうに目を逸らす。
ミリアはネサラの腕を離す。そして塔に突入するメンバーに襲いかからんとする正の使徒を思いきり殴りつける。

(さあ、行け……!)

彼らを送り出し、その後ろを守り、その帰りを待つのが、今のミリアたちの役割。
泣くのは、今ではない。不安の涙ではない。
泣くのは、全て終わってから。喜びの涙でだ。

[ 80/84 ]
prev | next
戻る