エピローグ 2

「驚いたな。ペレアス王のことも……あなたが女王になることも」
「私も驚きました。けど、ペレアス様や、民たちに強く望まれて……それに、私が王になることで少しずつでもデインを変えていくことができたらいいと思い、話を受けることにしました」

あれから数ヶ月、各国の情勢も少しずつ収まってきた頃、驚きの知らせが舞い込んできた。
――ペレアス王はアシュナードの子にあらず。その正体は王家とは無関係の孤児である。
民を偽ってきたこと、偽りの王が血の誓約を結ばされデインを危機に陥れた責任を取り、王座を退くことになった。
ペレアス王は王族ではない。アシュナードは3年前に死に、他の王族も――アムリタ曰く、アシュナードが流行り病に見せかけて全て殺してしまっている。
つまり、デインの王家は途絶えたことになる。
王家の途絶えた国の行く末は、宗主国たるベグニオンへの統合が本来の形なのだが、一度理不尽な支配に苦しまされた民たちがそれに納得できる筈もない。何より、この度の戦いでベグニオンもそれなりに混乱に陥っていた。デインを受け入れるだけの力は残されていない。
それならば、新たな王を迎えようということになり、その新たな王に、デインにとっての英雄であり、民から強く慕われているミカヤが指名された、ということだ。
そして、その即位式にミリアが王の名代として駆けつけてきた。

「……けれど、ペレアス様はまだ何かひとつだけ隠し事をしているみたい」
「……聞き出すべきじゃないのか?」
「ペレアス様なりにデインのことを考えて、隠している事実のようです。それを無理に聞き出すよりは、秘密のままにしておく方がいいかと……」
「隠していた方がいいこと、か……」
「はい」

例えば、仮に本当のアシュナードの子が見つかったとしても、表に晒せばペレアスの前例から民は疑心になる。余計な争いの素になる。そういうことは今となっては隠した方が平穏に済む、ということだ。

「なら、それでいいが。それより……改めて、即位及び、結婚おめでとう」
「ありがとうございます」

即位と共に、ミカヤはずっと共にいたサザとの結婚を決めた。混血の者とベオクの婚姻。行先は厳しいが、きっと2人なら何があっても乗りえられる。

「エリンシア女王も結婚式を控えてるし、ミストやジルたちも……めでたい話ばかりが続くな」
「喜ばしいことですね」

ここ最近は先の戦いで共に戦った仲間たちの結婚の話がよく舞い込んでくる。正式な式はもっと先の話になるが。

「仲間たちの晴れ姿はなるべく見たいが、都合が中々つかないのが悔しいな」
「そうですね。私も祝いの文だけでほとんど済んでしまうかも」

ミリアがこうしてミカヤの式を見られたことすら奇跡に近い。デインとラグズの交流の一環として鳥翼三国も呼ばれたものの、王たちの都合がつかず、ミリアがたまたま予定が空いていたという偶然が重なった結果だからだ。

「さて、長居しては印象も悪くなるし、そろそろ帰るとするか」
「はい。ありがとうございました。また会いましょう」

ゆくゆくはラグズとベオクの垣根を越えて同盟を。それは互いの望み。デインとのそれは厳しいが、小さな努力から始めるしかない。

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