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わたしの寮はなんとハーマイオニーと同室だった。なんということだ、物語の主人公3人組とこんなに近いポジションになるなんて……と頭を抱えたけど、寮で同室だからって物語に巻き込まれるとは限らない。せっかくなんだから、まあ、あからさまに避けるとかはせずに程よい距離感を保とうと思う。……まあ、毎朝起きれないわたしをわざわざ起こしてくれるハーマイオニーには感謝しかないんだけどね。今日も時間ギリギリまで布団に入っていたわたしを起こしてくれたハーマイオニー。だがしかし起こしてはくれるもののわたしが布団から出たのを見届けるとすぐに大広間へ向かってしまうので、わたしはうとうとしつつ大広間へ向かう。丁度シェーマスとネビルの近くが空いていたのでそこに座った。
「おはよう、ナマエ」
「おはよー」
「二人ともおはよー」
朝の大広間で元気な生徒たちがワイワイと朝食を食べる中、半分以上瞼が開かないままネビルとシェーマスに挨拶をした。ネビルはそうでもないけど、シェーマスはわたしと同じように眠そうにしている。朝って嫌だよねえ。
「眠そうだね、ナマエ。寝癖酷いよ」
「うーん、まあねえ。朝苦手なんだ……」
「わかる」
シェーマスが同意してくれて、ネビルが苦笑した。シェーマスはわたしが来た時にはもうほとんどご飯を食べ終えていたから少なくともわたしよりは早起きなんだと思う。ネビルに指摘された寝癖をちょいちょいと手で抑えてみるけど、それだけでどうにかなる程弱い寝癖ではない。わたしはヨーグルトにはちみつとバナナを入れてかき混ぜた。
「そうだ、今日は魔法薬学があるんだった」
「ウゲーッ! 朝から嫌なこと思い出させるなよ」
「ご、ごめん……」
ネビルがしゅんとする。そっか、今日魔法薬学があるのかあ。ううん、わたしも嫌な気持ちになっちゃった。別に授業が嫌なわけじゃないんだけど、なんかこう、ねえ。グリフィンドールと仲の悪い、スリザリンと合同授業っていうのも大きいよね。
「僕そろそろ戻るね」
「俺も行くよ。じゃあまた後でな、ナマエ」
「んー」
席を立つ二人に手を振って見送り、ヨーグルトを食べる。甘くておいしい……。ヨーグルトだけじゃお腹空いちゃうだろうし、もう少し何か食べよっと。そう思ってクロワッサンに手を伸ばした時、後ろから「まだここにいたんですか」と声をかけられた。
「あ……おはようございます」
振り返ると、そこには昨夜出会ったハウンド先輩が呆れた顔をして立っていた。まだはっきり覚醒していない私とは違い、制服とローブをしっかり着ている。朝強いんだろうな、羨ましい……。
「先輩も朝食ですか?」
「まさか、君と一緒にしないでください」
「な、なんかすみません……」
「君に用があったんだ」
「え」
わたしに用事って、いったい何だろう? さっぱり心当たりがない。ぽかんとするわたしにため息をひとつついて、ハウンド先輩は「今日の夜」と口を開いた。
「0時に、談話室で」
「ええと……あっ! わかりました」
一瞬なんのことだか分からなかったけど、昨日わたしが頼み込んだ先生になってくれる件だろう。まさか昨日の今日で教えてくれることになるなんて思ってなかったからびっくりした。
頷くと、ハウンド先輩は「それから」と口を開いた。まだ何か用かな?
「君も女性なら、大広間に来る前に寝癖くらい直したらどうですか」
そう言うとハウンド先輩は杖を取りだしてわたしに向けた。そして一振すると、わたしの重力に逆らった髪の毛が落ち着くのがわかった。す、すごい……。
「ありがとうございます」
「別に」
ハウンド先輩は「それじゃあ、また。……遅刻しないように気をつけるといい」と言って大広間から出ていった。そういえばもう残っている生徒はだいぶ少ない。やばい、一時間目の授業に遅刻する!
慌ててクロワッサンと残りのヨーグルトを食べきって、わたしは大広間を後にした。
