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 魔法薬学の授業はスリザリンの寮監であるスネイプ教授の担当だ。彼はグリフィンドール生が大嫌いなようで、何かあるとすぐに減点を言い渡してくる。因みに何も無くても何かと理由をつけて減点を言い渡してくるので、理不尽極まりない。特にハリーにはなんの恨みがあるの? ってくらい当たりがキツい。そして、何故かわたしにも。

「何故貴様はまだニガヨモギを刻んでいるのだね?」
「スネイプ先生が2人ペアにしてくれなかったからでーす」
「グリフィンドール2点減点」
「なんでぇ!?」

 最初の授業からずっと、何故かわたしは1人で作業させられている。料理は苦手じゃないし、手際がそこまで悪いわけじゃないとはいえ、他の生徒たちが2人で分担してやる作業を全部1人で行うのは当然時間がかかる。みんなが材料を切り終えて鍋に入れ始めた頃でもわたしはまだ1/3程の材料が残っていた。でも仕方なくない? 人数の関係で1人あぶれてしまったわたしがネビルのところに混ぜてもらおうと思って3人組でも良いか聞いたら「ミス・ミョウジは1人で行うのだ」と指示したのはスネイプ教授だ。なのに作業が遅いなんてとんだ言い分である。許容量を大幅に超える仕事を割り振ってきたくせに残業しようとすると怒り出す上司かって。
 別のテーブルに向かって歩いていくスネイプ教授の背中に、バレないように舌を出した。わたしが毎度魔法薬学で減点されているので、同室のハーマイオニーからの視線が時々冷たいんだよね。

「うわあ!」

 ニガヨモギを刻み終えて、次の材料に手を伸ばしたところで教室の後方から悲鳴が聞こえた。ビックリして振り返ると、ネビルが半泣きになっている。その顔には白いできものが無数にできていた。えっ何事!?

「どうしたの、ネビル!」
「ああ、ナマエ。ネビルが鍋を溶かして、中の液が顔にかかったんだ。まだ完成してなかったから、それで……」
「おできだらけになっちゃったんだね……」

 ネビルとペアを組んでいたシェーマスが質問に答えてくれる。ネビルは痛がって泣いていた。可哀想に……いや、でも鍋が溶けるって何事なんだ? って話なんだけど。
 騒ぎを聞きつけたスネイプ教授がやって来て、グリフィンドールに10点の減点を言い渡した。顔じゅうにおできが出来た上に減点までされて踏んだり蹴ったりなネビルは医務室へ向かうみたいで、スネイプ教授に頼み込むと、意外なことに着いていくことを許された。こういうのって本来先生が行くと思うんだけど……でもまあ、スネイプ教授に着いてこられたんじゃネビルは医務室にたどり着く前に死んじゃいそうだ。
 授業中でシンとした廊下を、ネビルと並んで歩く。ネビルの鼻をすする音とわたしたちの足音だけが静かに響いていた。

「大丈夫?」
「う、うん。ごめんねナマエ。僕……」
「え? なにが?」

 わたしがネビルに謝られるようなことあったっけ? 首を傾げると、ネビルは少し気まずそうに目線を逸らした。えっなになに?

「僕がどんくさいから……魔法薬学の授業抜けさせちゃって」
「そんなの全然気にしないでよ! 1人でやるの大変だし……なにより友達の方が大事だしさ」
「うん……」

 ううーん、気にしないでって言っても気にしちゃってるみたい。どうしたらネビルは元気になってくれるかな。もしわたしがネビルの立場だったら……うん、何言われても気にしちゃいそうだ。ダメじゃん。

「えーと。あー、その、ネビルはわたしと仲良くしてくれるじゃん」
「え? う、うん。僕達……友達、だし」
「うんうん。わたしはそれが嬉しいから、それだけで良いんだよ」
「で、でも……」
「ほら、友達なんだから迷惑なんて全然思わないよ! それとも、わたしが着いてきたら迷惑?」
「そんなことないよ!」
「良かった。それならネビルはもう何も謝らないでよ」
「う、うん。ありがとう、ナマエ……」

 ネビルは小さく笑った。良かった良かった……なんて思っていると、ようやく医務室に着いたみたいだ。マダムポンフリーはネビルの顔を見て「あら、まあ!」と声を上げると、すぐにネビルをベッドまで案内した。そしてわたしを振り返る。

「さあ、貴女は授業へお戻りなさい」
「はーい。じゃあネビル、またね」
「うん、ありがとうナマエ」

 ネビルに手を振って、わたしは医務室を後にした。そうだ、あとでお見舞いに飴を持っていこうっと。

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