レンリとアンデルセンが話してるだけ

「己が幸福のために命をかける…か。作家先生と趣味が合うとは光栄だ」
「は?お前と俺が?馬鹿も休み休み言え。願うなら言うな。
いいか?三流サーヴァントである俺と救国の英雄と謳われるお前では全てが違う。それは思想の一致であれ、趣味の一致にはならないだろう。その差で起こるものは相互不理解であり相互理解にはならん。気持ちの悪いことを言うな」
「私は英雄ではないけれど…そうなのかな」
「ああ、そうだとも。少なくとも俺にはお前と趣味が合うとは思えんからな」
「…先生って人と関わるの苦手だったろ」
「何を今更!当たり前だろ。作家なんてやる奴にまともな人間関係を持つ奴は居ない。健全な青春時代を送った人間もな!」
「…まあ、それは俺もそうだけど。ひとつ良いことを教えるよ、作家先生。ネタにでもしてくれ」
「…聞くだけ聞いてやる。すぐに忘れるだろうが、お前ほど作家に真摯な奴も珍しいからな」
「ありがとう。当然のことだけれども、先生と俺は違う生き物だ。言語も生き方も人間性も性格も。理解できなくて当たり前のはずなんだ。それを知っているのなら、理解できなくても良いと思いはしないかい?違う生き物を理解することは難しい、それだけで良いはずなんだ」
「……続けろ」
「うん。つまりね、俺はこう言いたい。相互不理解は相互理解に繋がるのだと」
「理解できないことを受け入れ、共にいることが相互理解であるとお前は言いたいわけか?」
「そうだよ。少なくともそういう関係もある」
「…そうか。またくだらないことかと思ったが、今のお前の言葉は少しは記憶に留めておくとしよう」
「座に持ち帰れる?」
「馬鹿か?馬鹿なのか?神霊でもないのに多くの記憶を座にまで焼き付ける変態はお前くらいだと知れ。その内座が壊れるぞ」
「別に俺は英雄じゃないから壊れても良いよ」
「…では俺も一つ。
お前は英雄だと思っていないのかもしれないが、お前ほど難解で壊れたように生きながら真剣に人々を護ろうと、救おうとする滑稽さは英雄の器に値する。
それを否定することはお前に護られた人々の念を、何よりもお前自身の努力を否定することと同義だと知るべきだ」
「ふむ?」
「自虐趣味も程々にしておけということさ。さあ、俺は疲れた。お前はさっさと出ていけ。その手に持つ聖杯戦争の資料を戻してな」
「資料室に我が物顔で居座っているのは先生だろうに。まあ、良いアドバイスも頂けたことだから退散するよ。ありがとう」