歩いていたはずの受験生がいつの間にか走り出していた。わたしも例外ではない。走り出してから数時間…、道から階段に変わり体力の消耗が幾分と激しくなった。疲れ倒れる者が続出し脱落していく中、なんて事ないって顔をしながらこの長い階段を上っている人が残っていた。
わたしの現在位置は…、先導する試験官の後ろにつけていた。頑張っただけある!


「サトツさん!サトツさんですよね!」

「…おや、やっと前にきましたね」

「人が多くて前にくるのが大変でしたっ」

「それはそれは、ご苦労様でした。やっとハンター試験を受けることにしたのですね。案内を出したかいがあります」

「アルバイトだけでは貯まるものは限られますし…、もう18です。そろそろ本腰を入れようと思って、まずはこれに挑もうとっ」

「そうですか、最後に会ったのは16の時でしたね。その頃に比べると大分成長したようですね。……では、お手並み拝見と行きましょうか。少し、ペースをあげますよ」


そう言ってサトツさんはペースをあげて階段を上って行ってしまった。


「ねぇ!」

「ん?」


サイトさんを追いかけていると後ろから声をかけられた。振り返るとまだ十代前半と見られる男の子2人がいたのだ。1人はツンツンの黒髪。もう1人は銀髪の猫目。


「お姉さんって、あの試験官の知り合いなの?」

「知り合いだけど、ん…?」

「いや、仲良さげに話していたからさ…」

「知り合いだけど、知り合い以上の関係、かな」

「え、何それ」

「関係性を表現できない関係、君たちみたいに友達関係って位置付けられるようなものではない、…うん。簡単にいうと尊敬できる人ってとこかな?」

「そうなんだ…、あ!オレ、ゴンって言うんだ!」

「…オレはキルア。お姉さんは?」

「ハナコ、よろしくね」


その後、ゴンくんとキルアくんに挟まれて喋りながら階段を上っていた。ゴンくんがお父さんと同じハンターになりたくて受験したこと、お父さんみたいになりたいと言っていたことを聞いて、まだ十代前半なのに意思がハッキリしてしっかりしているなぁ、と感心してしまった。

「ハナコは?」と志望動機を聞かれて「秘密」と言ってしまった。遺跡発掘調査の為にライセンスが必要とは何故か言えなかった。ゴンの動機と比べてるわけではない。ただ、まだ言わない方が良いとサトツさんの背中が、そう…言っていたような気がしたのだ。

キルアくんにはつまんないと言われ、ゴンくんにはずるいと言われてしまったが、苦笑いでなんとか乗り切った。
行く先に、次第に光が見え始めた。誰かが「出口だ!!」と言った。あぁ、これで一次試験が終わりかと安堵の息を漏らした。
 



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