姫と騎士03

エドガーは格納庫にいた。己が騎乗するナイトメアの整備のために。そこへ慌てたような声が響いた。

「モ、モニターを見てください!」

首を傾げながらもモニターを見てエドガーは開いた口が塞がらなかった。通信相手が動揺する存在が自分の愛機の目の前で佇んでいるのだから。

「ひ、姫さま!?」

急いでハーゲンで彼女の下へ向かう。あら、と小首を傾けるエヴァニエルの前に立ったときには精神的疲労で息が乱れていた。

「どうしたの?」

それは此方の台詞だ、と叫びたい。怒鳴ってもエヴァニエルは普段通りの反応、つまりはびっくりした様な嬉しそう
な表情をするのだ。だが、人目のある場所で怒鳴ったら皇族への不敬ということで確実に処刑される。それを避けるために怒声を飲み込む。

「どうかしたのですか?」
「見学に来たんです」
「見学?」
「うん。みんなのナイトメアは、他の人とは違うのでしょう?」
「えぇ、まぁ…」
「だから、みんなのナイトメアを知っていたら、戦場でもすぐ分かるから」
「だから、見に来たのですか?」
「うん」

無邪気な笑顔を向けてくるエヴァニエルに頬が緩む。少し離れたところには護衛の姿が見える。今日は撒かれなかったのだろう。というより、撒けなかったのだろう。笑顔のエヴァニエルの腰に腕を巻き付け、抱き上げる。息を呑むエヴァニエルを自分の腕に乗せる。

「どうしたの?」
「ナイトメアに乗せて差し上げます」
「わぁ、本当?」
「本当ですよ」
「私ね、一度でいいから、ナイトメアに乗りたかったの」
「前にコーネリア殿下に言ってましたね」
「そのときは却下されたけど…」
「良かったじゃないですか」
「うん、ありがとうエドガー」
「いいえ、姫さまが喜んでくれて光栄です」
「楽しみだなぁ」
「動きませんけどね」
「えっ」