姫と白の騎士

エヴァニエルから会いたいと呼び出されたのは政庁の屋上にある空中庭園。ラウンズの服装で空中庭園へ向かう。花や緑に溢れた庭園の中で彼女はまるで死んでいるかのように眠っていた。顔色は悪く、まるでユーフェミアが死んだときの光景が頭の中を横切る。

「枢木卿、お越しでしたか」

背後から声がかかる。そこにはエヴァニエルの幼馴染であるグラストンナイツの一人クラウディオがお茶の乗ったトレイを持ち、控えていた。コトン、とテーブルの上にトレイを置くとエヴァニエルの傍に膝を着く。彼もまたエヴァニエルの顔色の悪さに顔を顰める。

「ゼロによる黒の騎士団の構成員救出の際に、我が軍は多大な人員を失いました。その人員の中には我々グラストンナイツの2名も含まれて居ます」
「・・・」
「姫さまはアルフレッドとバートが死んでからずっと体調を崩され、ベッドから起き上がることさえ困難な状態が続いています。 そんな姫さまが突然、貴方にお会いしたいと言い出したのです。我々は勿論、姫さま付きの医師たちも反対したのですが、姫さまは言い出したら聞かない方ですから・・・・」
「そこは・・・ユフィと一緒ですね」

儚げに微笑むスザクにクラウディオも微かに笑む。

「姫さまが何を思い貴方に会いたいと願ったのかは分かりません。ですが、きっと貴方ならお互いのことを慰めあえるのではないか、とそう考えたのではないかと私は思います」
「・・・ん」
 
微かな呻き声を上げてエヴァニエルの瞳が開く。幾度か瞬きをしてから視線を上に動かすと柔らかいアメジストの瞳が自分を見ていることに気付くと安心したように微笑んだ。

「このような場所で眠られたらお風邪を召しますよ」
「気持ち、良かったから・・・」
「眠るのならお部屋に戻って眠ってくださいね。枢木卿がお越しですよ」
「スザクが・・?」




クラウディオの手を借りて、椅子に座ったエヴァニエルの正面には白いラウンズの制服に身に包んだスザクが座っている。クラウディオは少し離れたところで控えている。

「身体の調子悪いみたいだね」
「ん・・。お医者さまが仰るには、精神的なものなんだって」
「幼馴染の2人が亡くなったって聞いたよ」
「うん・・・、2人のためにも、元気に、ならなくちゃとは思うんだけど・・・」
「・・・・・・エヴァニエルは、僕が何でラウンズになったのか聞かないんだね」
「・・・聞かれたいの?」
「・・・・」
「私は貴方は絶対に、ユフィを忘れることはないと思ってる。そして、そうだった。でも、それは悪い意味で、忘れられないんでしょ?私はそれは嫌。良い意味で、忘れないで欲しい。ユフィが死んだことに、捕らわれないで、ユフィと過ごした楽しかった日々を、忘れないで欲しい。そう思ってる。けれど・・・・赦すのはすごく辛いね。憎んだほうが楽だし、救われる。けれど、救われるのは自分だけ。逝ってしまった人たちは、救われない。逝ってしまった人たちが、本当に救われるのは憎むことより、大切な人たちが笑ってくれることだと、私は思うの」