姫と病院

目の前でボロボロと涙を零すエヴァニエル。手で拭っても拭ってもその涙は留まることを知らず流れ続ける。そんなエヴァニエルをあやすエドガーと見舞い品として持ってきた林檎の皮を器用に剥くクラウディオの冷たい視線を一心に受けるデヴィッド。

「ひ、姫さま・・・・」
「ひっく、生きて・・て、よかった・・・」

デヴィッドの服は入院患者のモノで、彼の身体の至るところに包帯が巻かれ、彼の怪我の度合いを示している。新しいナイトメアフレームを調達しに行くギルフォードに付いていった彼は新総督の乗った重アヴァロンを狙った黒の騎士団と闘い、怪我を負ってエリア11へと戻ってきた。そんなデヴィッドを見舞いたいとエヴァニエルは言い出し、反対を唱えても無駄だと判断した2人がエヴァニエルを連れてデヴィッドの病室を訪れたのだがデヴィッドの顔を見るなり号泣し、果ては過呼吸まで起こしかけた。

「俺は、大丈夫だから泣き止んでください」

繋がれたエヴァニエルの手をギプスを着けた左手で撫でる。

「っごめ、ごめんねっっ・・・」
「姫さまが謝ることは無いです」
「そうですよ。デヴィッドの不注意に過ぎません」

謝るエヴァニエルに彼女を間に挟んで座る居残り組から辛辣な言葉が飛ばされる。彼らとて安心していないわけではない。ただでさえ、兄弟同然に育った2人を亡くしたばかりだ。安心したからこそ出る言葉だとデヴィッドは分かってるから何も言わずに苦笑する。

ようやくエヴァニエルの涙は止まった。しかし、目は真っ赤に腫れてしまっている。クラウディオが濡れたタオルを用意して渡す。

「デヴィッド・・」

クラウディオの手で両目をタオルで塞がれているエヴァニエルはデヴィッドの手を求めて彷徨わせる。それに気付いたデヴィッドが彼女の手に触れる。ほっ、と息を吐いたエヴァニエルはデヴィッドの手を両手で握り締める。

「生きていてくれてありがとう、デヴィッド」
「姫・・」
「それから、おかえりなさい」