姫と紅の騎士

ふわり、と笑んだ少女は今日もやって来た。ドレスに身を包み、椅子に腰かける旧友の下へ。

「どうしてナナちゃんもアンタも此処に来るのかしら?」
「友達に会いにきた、ではいけませんか?」
「いけなくはないけど・・・。私はアンタの敵よ」
「知っています。貴方は私の幼馴染を殺しました。けれど、それは・・・戦争だから・・」

ぎり、とスカートを握るエヴァニエル。その表情は激情を堪えているかのように見える。カレンはそんな彼女を見て苦しそうに微笑んだ。

「どうしてそうやって割り切れるの?」
「割り切れないですよ・・。今だって2人が、亡くなったことを信じられません。何処かで、生きていてくれるんじゃないかって・・・。けど、彼らが死んだことは、事実で、受け止めなきゃいけなくて・・・」
「私が憎くないの?」 
「憎い、と思います。けれど、それだと憎悪の連鎖は、断ち切れないから。私が憎いと言えば他の幼馴染が貴方を殺す、貴方の大事な人がまた私の大事な人を殺す。そんな終わらない戦いはもう嫌だから」
「大人、ね」
「カレンは、どうして戦うんですか?」
「日本の解放のためよ」
「そうですか」
「それだけ?」
「憎しみで動いているのなら止めて下さい、って言おうと思いましたけど信念を持っているのなら大丈夫かと思いました」
「ブリタニアの皇女殿下がそんなのでいいの?」
「皇女といえど人間です。考え方は人それぞれですから」

にっこりと笑うエヴァニエルはパチン、と手を叩きアッシュフォード学園の話を始めた。楽しげに話すエヴァニエルに相槌を打ちながらカレンは彼女がこの日本の総督であれば現状よりはましになっていたかもしれない、と思った。